この世の主人公

日々

幻のあなた

あなたはあなたと同化しているから、実は何があってもあなたがどこにもいない。思い出に浸っているときも、あなたはそこにはいない。写真にはあなたらしき人もそこに写っているけれども、あなたはあなた以外の友人のことばかりを懐かしく思ってるね。あなたであろう人もそこには記録されているけれども、いつも思い出はあなたが生み出している。けれども、あなたをあなた以外の場所からは眺めることは稀だね。あなたはそこにいたという感覚だけがあなたとしてかろうじて成立しているだけのことだ。もしかしたらよくわからない夢のようなことばかりで、それが証拠にあなたが知り得ぬところであなたが思いもしないことばかりが起こっているように感じることもある。それらの奇妙な出来事に振り回されて、もはや辟易しているだろう。あなたがそこにいるはずにもかかわらず、あなたの夢にはあなたの姿は見えないのは、そういうことなんだ。

夢と現実

突拍子もない夢を見ることがある。例えばこれまで経験もしてこなかった状況であなたが活躍していたり、知っているような知らない人となにかをしていたりする。夢から目覚めて現実という世界に降り立ったときも、ああ、あれは夢だったんだと思っているけれども、この現実という世界にもまた、あなたが想像すらできなかった困難がしばしばやってくる。それに格闘しているつもりだけれども、いずれ解消するときには、やっぱりあなたは主人公と同一化しているから、あなたはその場所にはどれだけ見渡したところで見つからない。夢でも現実でもあなたは、あなたの姿を見ることは鏡に写ったあなたか、スマートフォンで自撮りした画像でしか確認できないわけだ。これは本当に現実なのかどうかと問われると途端に困ってしまうのは、あなたがいつもそこにいる前提でしかないからだね。

存在意義

しかしながらそれらのヘンテコな夢や現実を含めて、あなたの思考の中でおきたものだと言うしかないね。だからあなたがそれらを生み出している源泉だと捉えるしかない。ということは夢も現実もあなたが創造したものだとも言える。そうなんだけれどもあなたはそれはいつも外からやってくる厄介事だと苦しんでいるわけだ。まるで自作自演のドラマの脚本家であり演出家であり監督でもあるあなたが、自ら設定したドラマの中で不幸を演じ続けている。もっと言えばそうであるはずなんだけれども、あなたの範疇を超えた出来事や設定やキャスティングがそこに生まれたりして困惑している状況だね。ならこの世は一体誰が主人公なんだと嘆いたりするわけだ。すべてはあなたが生み出したものであるはずなのにね。一方で奇想天外なことや突拍子もないこと、脈絡のない出来事があなたの想定外で起こっているから、それはあなたではないと思っている。はてさて、あなたは一体何者でどこに向かっているのかすらあなたは知らないままだ。