Stay Dream

日々

夢のようなひととき

懐かしいあの頃の歌声が聞こえる。当時の風が頬を撫でる感じや、季節の匂いまで思い出したりして、いっときのタイムワープを楽しむ。絶望と希望とが入りまじっていた少年に戻ったかのような錯覚に陥るね。いつかの少年はいずれ自分も歳をとり、やがて消えゆくこの身を知ってはいた。けれど、そうなったらどんな気分かという実感は想像すらできなかった。自分の行く末なんてどうでもよかった。そんなことより目の前の憤りや不条理さとどうやって共に生きていくのか、しなやかに、したたかに、人に優しく、自分に厳しく生きるかという夢ばかり追いかけていた。深い絶望は、同時に大いなる希望をそこに生み出していたんだ。

忘れてしまった歌声

そんないつかの少年の心の動きを今感じながら、何度声を枯らして気の合う仲間と歌ったかわからない懐かしい歌を聴いている。その位置から眺めて目を細めている自分が今ここにこうしていることが、なんだか小っ恥ずかしいと同時にたくさんの忘れ物をしたような気分になる。そう、今まで手にしたもの、手にできなかったもの、やりたいこと、やりたくないこと、いろいろ飲み込んで今ここでいつかの少年を見ている。あの時に公園に埋めた宝箱を掘り起こして答え合わせをしているかのように。仲間と夢を語って、生きている時代に傷をつけたくて、生きる意味と生きた証をどこかに刻みたくてもがいていた君は、はてさてまだそこで歌っているかい?っていう問いを突きつけられているかのように。

いつかの少年

少年はやがて歳をとり、今こうしてすべてを振り返るところにいる。なんだかんだで思い通りには全くいかなかった。けれど、今ここにそれを懐かしんでいる自分がいる。小さな窓からすべてを見ているつもりでいた。今もその窓枠はあいも変わらずだよ。あの頃からいろんなことが変わったんだろう。でも、何が変わったかと聞かれたら、何も変わってないと笑って答える。人はそれを成長とか進化と呼ぶんだろうけれど、そういう意味ではどんな成長をしたんだろう。すべてが変わった気もするし、何も変わってない気もする。まだ道の途中だし、いつも夢の中を彷徨い歩いているし、これからもきっとそうなのだろう。

ずっと夢の時間

いつかの少年はやがて消えゆくこの身なら、どんなふうに生きるのかといつも答えを探し求めていた。そんな夢をいつも見つめてね。夢を見つめることが生きることそのものだった。夢は夢だと気づいたとき、その手に握りしめていた夢を一つずつ手放していったけれど、生きるという大きな夢だけはずっとそこに残ったままだった。そして今こうして振り返っている。そう、夢のような時間はあいも変わらず今も流れている。それは叶い続けているんだ。すべてが変わったようで、実は何も変わらず、いつもずっとそばにあった。それに気がついたからすべてが愛おしく、懐かしく、心を揺さぶるんだよ。いつかの少年はずっとそばにいるよ。だから安心してねって教えてくれているんだね。ありがとう。