前に後ろに
振り子
とっても幸せな瞬間を感じた時、それと同時によぎるのがそれが終わったり失われてしまう恐怖だろう。せっかく幸せいっぱいなひとときなのに、あまりにそれが素敵すぎるがあまりにやがてどこかへ消えてしまう恐怖も大きくなったりするわけだ。そう思ってしまうあなたはときに嫌になるかもしれないけれども、それは世の中の真実を知っているからでもある。すべては移り変わることをなんとなく知っているからだね。そしてそれはその通りになることがほとんどで、実のところ何も変わってないとしても、その幸せという充足感がいずれ感じられなくなっていく。あなたの傾向として急激になにか変化があると大きく感じ、それが続くとどんどんとその変化を過小評価してしまうからだ。経済学では限界効用逓減の法則なんていうけれども、一杯目のビールはとても美味しく感じられるけれども、二杯目三杯目となるとその感動は薄れていくね。不思議なことに初めて何かを手にする瞬間を最大として、それ以降はどんどん減少してしまうのを知っているわけだ。
ブランコ
したがって、今あなたが幸せであっても、不幸であっても、それらどっちでもなくても、すべては振り子のように常に動き続けているわけだ。だからこそ有頂天になったり投げやりになったりするのはまさに振り回されているだけで、それ自体は長くは続かない。そうやって感情を揺さぶり続けられるわけだ。そうして人生を堪能しているとも言えるね。そういうものだと少し離れた場所から見ているもうひとりのあなたは、ブランコに乗っているあなたを眺めている。それをそのままを受け入れる状態だと言えるわけだね。ブランコに乗っているあなたが前向きに触れているとき、あなたは前進しているように思っているだろうし、振り切って後ろに下がっているときはあなたは不幸のどん底に向かっていると思っている。そうやって前後に揺さぶり続けられていることを少し離れたもう一人のあなたはそれが前進も後退もしていないことを知っているわけだ。
両面
それ自体は一つであっても、物事には裏表があるから存在しているわけだ。あなたはプラスとマイナスの面だけを見て、あれこれと感想を述べているだけに過ぎない。まるごとひとつだということをいつの間にか忘れてしまっているね。そんなジェットコースターのような変化を嫌う割には、誰よりも幸せになりたいとか、とにかく不幸や嫌なことを避けたいとか、そんなことばかりに振り回されているんだ。それがわかるとあなたは目の前のことだけに右往左往することが楽しみに変わるだろう。さらにいえば表にも裏にもそれぞれの味わいがあり、深みを感じることさえできるだろう。そうなれば何が幸せとか何が不幸だとか区別することさえ馬鹿らしく感じて、まるごとすべてが愛すべきすべてだということに気づくね。それが一歩ひいたもう一人のあなたから見た景色であり、ありのままを受け入れている状態だとも言えるわけだ。