たった一つの出来ること
どん底
何も上手くいかないときが誰にでもあるだろう。あなたにもそんなときがあったね。もしかすると今まさにその通りだと言うかもしれない。それでも冷静に見つめてみることが大切だね。何も満たされない毎日だと嘆いている一方で、それでも美味しい料理にありつけたり、ちょっとした優しさに触れられたり、親しい人から愛されている瞬間を感じることができるね。もっというとそういう陰鬱な日々の中でホッとするひとときがとても愛おしく感じられることがゼロではないだろう。暗闇の中だからこそ、ちょっとした明かりが見つけやすいように、あなたの意識が暗いからこそ少しの明かりがよく見えるようなものだ。そんなときを感じることができると世の中捨てたものじゃないと思うことも少なくないはずだ。逆に言えばかえってそういう気分だからこそ見出すことができるとも言えるね。皮肉なことに陰鬱な日々の中にあなたがいることで、小さな幸せや変化の兆しを見つけることができるわけだ。
幸せの中で
ということは、逆に幸福の真っ只中にいると、誰かがそんな陰鬱な日々を送っていることすら想像できなくなる。そういう意味では他人の境遇には疎くなってしまう。それこそネガティブで何事も悲観的に表現する人はあなたの周りには存在しないとさえ感じてしまっているだろう。誰かが不幸だと見つけてしまうと、あなたの幸せも台無しになってしまうからだ。だからそんなつもりではなかったとしても、あなたにとって取るに足らないことでうじうじと悩んでいる人をかえってさらに追い詰めてしまうこともあるだろう。そんな消極的な態度だからこそ不幸に感じられるわけで、あなたからすればその原因は彼自身にあると断罪してしまうこともあるからだ。笑って過ごそうなんてそういう人にかける言葉ではないのに、あなたは屈託もなくそういう声をかけてしまって踏みにじってしまうかもしれないからね。でもそれらはすべてお互い様であって、あなたが今ポジティブで前向きなのもいずれは逆転してしまうことがあるかもしれない。そういう意味では彼もあなたもたまたまそうなっているだけのことだとも言えるね。
寄り添う
あなたも彼らもそういう思いはそれほどコントロールが容易いわけではない。だからあなたを基準に押し付けることはあまりうまくはいかないだろう。あなたが正義になりがちだけれども、そういうあなたも昨日までは他人の成功を羨む不幸のどん底にいたのだからね。だからこそ善意でそこから脱する方法を伝えたくなるだろう。けれどもそれはかえって彼らを傷つけることにもなりかねないわけだ。そんな状況の中であなたができることといえば、そっと寄り添ってあげることだけだね。良いとか悪いとか断罪しないで、静かに黙って見守ってあげるだけでいい。もちろんそれで何かが大変化するわけでもなく、かえって彼らを傷つけるシーンもあるだろう。それでもあなたはそばにい続けているだけでいい。余計なアドバイスや励ましのことがなんて不要だ。それはかえって傷をえぐることになるからね。ただそばにいる。それだけのこと。もちろん巻き込まれることも不要だし、変に同意したふりをすることもしない方がいい。ただただじっと見守ってあげることしかできないのだからね。