世界の一部

日々

迅速さ

うまくいかないとき、あなたは焦ってしまう。それはどうしてかというとなにかをしないといられないからだ。とにかく空白の時間がいつの間にか苦手になっているね。何もしないという本来の姿をできるだけ見ないように、避けているかのように生きている。常に何かをしていないと手持無沙汰で、おそらくは数分たりとも耐えられないようになっているのはどうしてだろう。それは常に何かに駆り立てられているからであってその根本を捕まえてみないといつまでたっても焦り続けるわけだ。そうやって生きることがいつの間にか当たり前になっている元凶は、早くしなさいと言われ続けて育ってきたことも一因だろう。グズグズしている子どもに対して、母親がいつも口癖のようにかける言葉の一位は早くしなさいだそうだ。ゆっくりのんびりとやることが悪だと刷り込まれて今がある。だからあなたはスピード重視の世界の中で生きづらさを感じているわけだ。

待機

それに反して人生の本質は暇つぶしだと言われている。時間は弄ぶためのものであり、生きるということはそのなんでもない刹那でできている。人生に意味がないとかとも言われて、あなたはますます意味があるようにと焦ってしまうわけだ。それは、意味がないのが耐えられないからだ。空白の時間や空白の人生をなぜか受け入れられない。ということは、ある意味それが根本であるということでもあるね。あなたは空っぽであり幻影そのものだという真実を真正面から見つめることをできるだけ忙しくすることで誤魔化し続けているのが本当のところだろう。もっと大きく捉えたならば、あなたを知る大切な友人も、あなたと同世代であればいずれ誰もが消えてなくなるわけだ。あなたが大切にしてきた彼らも、この社会全体も儚くも消えていくことに薄々気づいている。だからこの瞬間をなんとか埋め尽くすことで気を紛らわせている。

八面六臂

だからせめてこの瞬間だけは、大活躍したいという自己承認欲求で満たされるわけだけれども、それすらも思っているようにはならないわけだ。そしてそれらはあなただけの世界では完結せず、誰かに評価されて成立するものばかりだからだね。そんなことを気にせずあなたがやりたいことをやればいいだけのことだと切り替えたとき、あなたはどうであろうとあなたの人生を受け入れることができる。すなわち、やりたいならばやればいいし、何もしないのも大いにあなたそのものだという本質にたどり着くことができるね。そもそもやがて消えゆく存在であるわけだから、何もしないでいても、何かを焦ってやり続けても、その結果は変わらない。だから投げやりになるとか、急に達観したかのようになれとかそういう表層的なことではなく、深くこの世界が大いなる愛に包まれていることに気づくだろう。どうであってもあなたはここにいたという奇跡をすでに感じられるだけで、人生の本質に触れているのだからね。