思考だけの試行錯誤
つくる力
あなたは手先が器用な方だね。だからいつも工作とかは得意な方だった。そんなふうだから、DIYとかちょっとした小物や家具はあなたの手によって数多く生み出されてきた。そういうものづくりに幼い頃から興味があったから、あなたにとってはお茶の子さいさいだ。仕組みがわかると、何がポイントなのか何が大切なのかをすぐに見抜く力がある。そのせいでものづくりだけではなく、大人になって会社での仕事の構造もすぐに見抜くことができたね。だからそれを改善するポイントもあなたにとってはすぐに見つけられる簡単なことだ。そう、つくる力とは幼き頃に遊びによって体得した積み木やママゴトの中で培ったわけだ。目で見て頭で考え手先を使って試行錯誤を繰り返すこと。その当時はそれがどんな役に立つかなんて考えもしなかったけれど、今となってはこれが本当の生きる力となっているわけだ。
うごかす力
そうやって仕組みづくりを終えると、次にそれをどううごかすのかということが課題になってくるね。現代の業務改善にしてもシステム導入にしても運用というフェーズでそれをどう動かし維持していくかということが抜け落ちていることが多いのは、そもそもそれがどうしてそうなっているのか、そのための大切な部分はどこか、という理解が不足しているからだ。でもあなたにしてみれば自明のことで、仕組みがわかっているからこそうごかすためには何が必要なのかということがすらすらと思いつくだろう。そしてそのための体制を構築するのもまた、ものづくりで培った仕組みの洞察力が大活躍するわけだ。ものができただけではものを使いこなすことはできないし、できたものをいくら改善したところでそれを使う側の理解がなければ砂上の楼閣だ。その両輪が回り始めることですべては動き出すのだからね。
生き抜く力
現代は意味や価値がどんどん変化し続けている。さらにそのスピードもとても速いね。だからこれまでそれで十分というか、誰も気が付かなったもっといい方法をどんどんと活用することが求められている。ところが、旧態依然としてこのままでいいという人も多くいるのは、何かをゼロからつくる力とそれをうごかす力が不足しているからとも言える。それはなんのことはない、昔からやってきた幼き頃のママゴトやどろんこ遊びをしなくなったのが原因といえば大げさだろうか。でも、頭だけでわかったつもりになっている頭でっかちの人がつくったシステムがまともに動くこともできないことがままあるのは、実はそれが原因かもしれないよ。思考だけで試行錯誤しても、結局のところそれを手足を使って動かすのもまた人だからね。その人の使い勝手や思考のクセや構造がわからないまま、理想という崇高な幻想で生み出されたそれらがなんの役にも立たずに生まれては消えていくことを目の当たりにすると、そういうことが見えてくるね。