なにもないけどすべてある
もともと
もともとはあなたはどこにもいなかった。それが気がついたら生まれていたらしいし、おそらくはいずれこの人生は終わると知る。でもそれは、誰かから聞かされたことであって、あなたの実感としては特にないというのが本当のところだろう。おそらく誰かがこの世を去ることはたくさん見てきたけれども、まさかあなたもそうなるとは確信は得られていない。けれども、おそらくはその現象を見たことであなたもいずれそうなるんだろうと思っているだけだ。一方で、あなたが今を生きているという認識も、たくさんの生まれてくる赤ん坊は見たことがあるから、あなたもそうだったんだろうと類推できるわけだ。そうやって誰かに教えられて、それを根拠にしてあなたが生きているという実感は生まれている。特に子を産める女性は、自らの身体を呈して出産を経験することで、おそらくは自分もこうして生まれたと確信できやすいだろう。それでも産みの苦しみは体験できたとしても結局のところ自らが生まれた記憶はないわけだ。
今ここにいる不思議
そうやって誰しも生まれ落ちたこの世界で、あなたは生きている。そしてそれがあなたにとっては疑いようのないものだと信じている。でも、もともとこの宇宙に目を向けるととたんに混乱することが多いね。宇宙の始まりはどうだったのかとか、この宇宙も永遠ではないと教えられたときあなたはもはやあなたが認識できる空間を遥かに超えているわけだ。こうして人類の叡智だとか文化というものもいずれはどこかに消えてなくなるとされている。では一体あなたがこれまでにしてきた努力や苦労や培ってきたこれまでの経験は一体なんだって言うのだろう。すべてが宇宙が見た夢物語なようなもので、実はどこにも実在しない幻想だと言うのかと落胆するかもしれないね。
諸行無常
もうあなたが生まれる随分前からそのことに気づいた人がいる。常に万物は流転するし、同じものなど一つもないと見抜いたのがブッダだね。そしてそれらを通じてこの世どころかあなたでさえどこにも存在しない幻想だと説いたわけだ。だからあなたがあなたにとらわれて執着すればするほど苦となり、まさに人生という夢物語において実在との葛藤で苦しみが大きくなるから注意しなさいと伝えている。あなたはもちろんその一部は理解できるけれども、それがわかったところでどうやって現実を生き抜くのかとまた悩み始めるわけだ。極端にいえば何があったとして「それがどうした」と問えばいいわけだけれども、そんなに単純ではないから苦労が耐えないと感じているわけだ。すべてが無に帰するというか、もともと無であり続けたこの世の一部としてあなたは奇跡的にそれを見ている。ならばあなたはすでに永遠を手にしている稀有な存在だとも言えるわけだね。