クリーンクリーン
自然体
自然の中であなたは生きている。けれども現代社会では都市部で生まれて、そのまま都市部で生きていくことが前提になっている人も少なくないね。だから街で暮らしている人たちは自然を求めてわざわざ旅に出たり、公園に言ったり野山を駆け巡るために移動せざるを得ない状況だ。都市部といえども少しばかり移動することができれば、すぐに緑豊かな郊外と呼ばれる場所へ行くことができる。でも普段はコンクリートで固められた場所にいるものだから、自然からどんどん遠ざかった暮らしを余儀なくされるわけだ。今の子どもたちは小さな虫でさえ拒絶反応が大きく、ちっぽけな生き物に過剰に怯えて生きている。それぐらいクリーンで不自然な暮らしをしているにも関わらず、当の本人はいたってこれが自然に過ごしていると思い込んで、スーパーで買ってきた動物や植物を食べて生きているわけだ。
衛生観念
かつてのウィルス騒ぎで誰かがコホンと咳き込んだりしたら、自然と距離を置く人も増えた。目に見えないところにも脅威が潜んでいると学習した彼らは、どんなものに触れるのも恐る恐るだし、マスクが手放せないぐらいに慎重に人混みを歩いている。行き交う人がたくさんいるのも都市部の特徴の一つだね。いわゆる里山に行けばそんなに人と出会うこともすれ違うこともなく、ましてや満員電車のような知らない人と密着させられることを余儀なくされる体験もない。しかしながら自然が残るそこには都市部ほどの衛生環境は望めない。所々に消毒用のアルコールも設置されていないし、虫が全くいない緑も存在しない。必然的に自然の中の生態系が保たれているからなんだけれども、それらと自らを区別するようになったが故に勝手気ままに飛んでくる虫には耐えられないわけだ。
自然の一部
あなたの体内はなぜか清潔でクリーンだと思い込んでしまっているわけだ。流行り病は誰かが媒介してそのせいであなたにも移されるものであるし、それを防ぐためにはあなたがそこに近づかないか、近づかざるを得ない場合は皆が清潔でクリーンでなければ社会的害悪だとレッテルすらはられてしまう世界だね。マスクが手放せないのも、他人の唾でさえ付着することすら嫌うようになったわけだ。けれども動物はどちらかといえば唾が多いね。しかも子孫繁栄のためには体液交換する必要があるわけだけれどもいずれは試験管上で行われるようになるかもしれない。クリーンで清潔な状況でないと様々な疾患が襲いかかり、その中でも死に至る病もあるから気を抜くことすらできないわけだ。しかしながらあなたは自然の一部であり、その毛嫌いする細菌を体の中で抱えて共生しているという事実を捻じ曲げてでもそうしたいと思っている。あなたは決してクリーンでも清潔でもなく、それでもそう簡単には病にはならず、現代社会でいう清潔とかキレイはかえってあなたの免疫を弱めているというパラドックスが知らず知らずのうちに進行しているんだけれどもね。