同じ空の下で
疲労
あなたは毎日激務で疲れているね。それでも特に誰かにあなたを労う言葉もない。そんなことお構いなしにあなたは今日も一所懸命だ。そんなあなたは少しだけ休みたいと思って、ふと空を見上げる。するとどうだろう、真っ青に晴れ渡り雲一つない空にあなたは癒やされる。細々とした煩わしさがすっと消えていく感覚だね。そこに人生の本質を垣間見るわけだ。疲れなどもともとない。すべてはこの空の下で起こっていた。もちろん曇りの日や雨の日もあるけれども、それもこれもその向こう側にはずっと晴れ渡る空があったわけだ。あなたは眼の前に起こることばかりに振り回されていただけで、ずっと美しい空に守られていた。改めてそれを再確認するだけで、それ以外は何も必要ないことなんだと知る。さっきまでの疲労なんてもはや幻想に過ぎないとさえ思えるぐらいの真実に触れたわけだ。
不満
満足を得るために、苦しみを味わっている。そうでもしなければ満足は得られないと思い込んでいるからだ。しかしどうだろう、何もしないでも空を見上げた時に得られるその感覚は、それ自体で十分だね。すなわち今ここにいるということを身体で感じる時、宇宙と一つとなるわけだ。そしてそれはすぐに雲に覆われて見えなくなってしまう。でもそれも永遠にそうではなく、いっときのことだ。いずれその雲も風に流されてどこかへ消えていく。そこであなたは気づくわけだ。それはまるであなたの人生のようだとね。雲はどこからか来て、どこかへ消えていく。そしてさっきまで大荒れの天気も嘘のように、またすっきり雲一つない空がいつも広がるわけだ。ずっとあるものにあなたは見守られていることを知る時、あなたはそこですべてを感じている。あなたがいるここはそういう場所なんだとね。
描かれているもの
真っ白なキャンバスがそもそもあるはずだけれども、それはその絵の作者しかその状態を知ることはない。他の人は大抵は出来上がった作品を見ることが多いからだね。それと同じで人生において真っ青な空を見る機会は、飛行機で雲の上を飛んでいるときぐらいだ。そんな当たり前のことすらあなたはすっかりと忘れてしまっているから、いつもこの世は雲に覆われていると思い込んでいる。だから稀にその真の姿を見られたとき、あなたの心は揺さぶられるわけだ。ややもすれば世の中そういうものだと知ったかぶりをしていたからね。だからこそ、その雲でさえ愛おしく思えるようになる。それもこれもあなたのために出現しているものだからだね。あなたが今ここにいることを、そして本当はすべて真っ青な空の下にいること、それだけであなたの視座が変化する。するとこの世たるものはなにかを感じるとることができるだろう。