いつかの少年のように
進化
若いときは何も知らなかった。いろんなことが初体験であり、だから恐れもなく、果敢に挑戦することに躊躇がなかったね。知らないということは若さのパワーとも言えるわけだ。そうしてたくさんの失敗や苦い思い出を積み重ねて年老いてきた。そして今では困った老人と呼ばれるようになってしまった。その理由は、そのおかげでもあるけれども、いろんなことを知っているからだ。知らないことがあっても大体のことは類推できるような智慧がある。だから今度は若者の浅はかで思慮の足りなさばかりが目についてつい小言が出てしまう。でもそれはあまり良くないね。もちろんあなたはそれが良かれと思ってそうしているのだけれども、かつてのあなたと同じように苦い思いや失敗を経て、成長があるわけだ。その体験を奪ってしまっては、生きるチカラがどんどんと低下してしまう。あなたが得てきたそのパワーを次世代に引き継ぐためには、何も先回りして言うことばかりではないのだからね。
時代背景
さらに言えば、あなたが生きてきた時代の潮流は、今となってはおそらくだいぶん違っている。だからやっぱりあなたがやってきたように現代の若者もやりたいように果敢に挑戦し、失敗を重ねることが必要だ。さらに言えばあなたもそうだ。困りごとのない人生なんて、老化を加速させて害になる。困りごとこそ若さのパワーの象徴だし、それをあれこれと解決しようともがき続けることが若さのエネルギーの元なんだからね。それはあなたがすでに経験してきたことであるから十分にわかっているだろう。知らないことがあるから、ちょっとしたことで困る。そしてその壁をいくつも乗り越えてこその成長だ。だからあなたもわかったつもりになっている場合ではない。随分前に似たようなことがあったとしても、今ではどうなんだと困ってみることが大切だね。それが若さのパワーであり、何も外見ばかりに気を取られている場合ではないね。
学び
そうやって学びを止めない限りあなたが害になることは少なくなる。同じように困ったことに真摯に対峙して、ときには大失敗するような背中を見せることで本当の意味での若さを維持することができるわけだ。もちろん心身ともに衰えているのは事実だ。でも困りごとをなんとかしようという意思の力は衰えていないだろう。もちろん若い頃のように力技でねじ伏せるような真似をしたところでうまくいかないのはもうわかっている。だからやり方を変えて、体力ではなく知力で解決する方針へと転換することが必要だね。それでも困り続けることで、あなたはいつも生き生きとした毎日を送ることができるはずだ。若かりし頃に戻ったように、この年になっても同じような失敗を繰り返して辟易とすることもあるだろう。でもそれが若さの秘訣でもある。あなたはいつの間にか年老いてしまったけれども、心の中にはいつかの少年のように知らないことを探し求めて探求の旅を続けているわけなんだからね。