シグナル
忘れよう
最近毎日がとても疲れるのならば、その原因を探ってみよう。おそらく、仕事が忙しいとか人手不足でいつもより業務量が多いとか、難しい商談と向かい合っているとか、どうしてもノルマを達成することができずにいるとか、そんな原因が見つかるだろう。それを一旦忘れてしまえばいい。すると疲れを支えていた記憶がなくなり、あなたは疲れていることすらわからなくなるはずだね。うまくいかないとか辛いとか悲しいということはすべて過去の思い出によって生まれている。だから執着を手放すと世界が変わると先人たちが伝えているわけだ。良いことも悪いことも同じ性質で、結局のところ今の今というものではなく、過ぎ去った出来事を思い出すたびに苦しくなったり、ほくそ笑んだりしているわけだ。まさに今の今のことではなく、少し前の過去をずっと引きずっている状態が延々続いている。
生放送
放送がデジタル化して、すこしばかり前の映像が放映されている。いわゆる遅延という現象だね。リアルタイムに刻々と映像が放映されているのだけれども、実際ジャストオンタイムではなく、少しだけ処理が必要なので遅延してしまうわけだ。あなたの今という感覚はそれに近い。だからライブだと思っているそれらの現象も、実のところ同じ構造にある。誰かと会話しているときに、それがいい方向なのか悪い方向なのかという解釈のために少しばかり映像化して捉えるのにタイムラグがある。そして衝撃的なシーンとなったときは、処理すべきパラメータが多すぎて最初は理解すら困難になるだろう。そうしてあなたが処理したいデータとしてまとめたあとに、色々と吟味が始まるわけだ。したがって実のところ、今の今の正体とは、単なる光信号や感覚器が捉えた電気信号でしかない。その信号をどう処理するかであなたの世界が構築されているわけだね。
予感
だからあなたには過去の膨大なデータから、未来を推測する能力が備わっているわけだ。今の今を瞬時に処理するためのデータフレームを多く持つことで、処理スピードを簡略化して速めているわけだ。そのことで例えば命に関わることであれば、とっさに行動できないとまずいわけだから生き抜く術とも言えるね。ところがその能力が優れていることの弊害が、やる前からどうなるかという映像を生み出してしまうことだ。いわゆる妄想だね。どうせやっても失敗するとか、こう言えばおそらくはダメになるとかだ。その能力を通じてあなたは優しく対応したり、厳しくしたり自由自在に行動をすることができるようになる。とにかくその妄想がネガティブ傾向にあるのは、これまた社会生活において学習してきた膨大なデータ分析からそうなっている。なにかをやって失敗したときの疲弊を避けるために、なにもやらない選択肢が増えるのもそのせいだ。けれどもそのデータを一旦忘れてしまえば、あなたには今の今の単なる信号しかなくなるわけだ。そこに良いも悪いもなにもない世界が広がっている。