同一化
あなたの世界
あなたの世界は実はあなたが一番邪魔者なんだよ。こんなふうに言えばぞっとするかもしれないけれども、実際そうだね。例えばあなたがなにかに夢中になっていたり、集中しているときを思い起こせばすぐに気がつくだろう。そう、そこにはあなたはいない。もっと感覚的に描写すれば、あなたがその夢中になる出来事と同一化しているわけだ。ところが、あなたが苦手なことをしているときは、常にそれに対する反発心と恐怖心を感じ続けているあなたがはっきりと存在する。こういうのは受け入れがたいとか、こんなことをどうしてやらなければならないのかとか、常にその出来事や物事と乖離しているあなたがそこにいるね。ということは、そこであなたがやるべきことは明確になっているとも言えるわけだ。あなたの苦手としていることや、嫌いなことをどうやってあなたと同一化するかということだけだと明確に気がつくだろう。夢中になっているとき、あなたはどこにもいない。苦しいときは、あなたがくっきりと分離されているというわけだ。
受け入れる
けれども、そんな嫌いなことや辛いことをすべて受け入れると心が折れてしまうだろう。だからそのすべてをなんとかしようとは思わないことが大事だね。苦手なんだと気づいたら、それをどうやったら得意になるかを考えがちだけれども、そうではなくやるべきことはただ一つで、受け流すことだ。まともに面と向かうとますますあなたとそれとの分離がくっきりと浮かび上がるわけだから、それがあたかもあなたにとっては見えていないような感じでちょうどいい。あなたが忘れてはならないことは、そういう分離が起こっているという認識だけで十分だ。そしてそれをなんとかしなければならないという思いにとらわれないことがうまくやり過ごすコツでもある。もちろん完全に無視しようとすればするほど、そのことにあなたのエネルギーを注ぐことになるから注意しなければならない。そうではなく、今分離が起こっているということはしっかりと向き合う必要はあるけれども、それをすぐさまやっつけるのは待ったほうがいいということだ。
誰かのせい
受け流すというと、今流行りのアドラー心理学的にあなたの問題と誰かの問題とを切り離すという方法もよく見かけるようになった。それはあなたがすべてを請け負わなくてもいいという示唆に富む方法ではあるね。誰かの悩みや苦しみまでもあなたがすべて受け止めなくてもいいし、それをやったところでおそらくは苦しみだけが際立ってしまうだけだろう。受け流すという感覚に近いわけだから、流行っているのも頷けるね。でもそうしたところで、一時的にはそれで少し肩の荷が下りるかもしれないけれども、長期的にはずっとつきまとう問題となるケースがあるから注意が必要だ。全くあなたには関係のないことであれば、それで自然と消えていくだろう。けれども、あなたも含まれた関連するなにかであれば、分離したところでずっと引きずってしまうかもしれない。そういうときは、あなたの問題であるところだけをあなたが一体化していく必要があるかもしれない。気に入らない誰かの問題だと思っていたことが、実はあなたの問題として現れているからだ。