小麦の大作戦
サバイバル戦略
人が狩猟採集から農耕定住生活になってからムラやクニが生まれた。そして現代社会につながっていくわけだ。そうやってある程度の集団が大きくなることで管理が必要となり、掟というルールも整える必要が生じた。今でも細々とした法律によって支配され、法治国家であるがゆえにいろんな人が同じような場所に集まってなんとかやってこれたわけだ。それもこれも最初はなんだったのかというと、小麦を代表とする作物だったわけだね。ミツバチは花の蜜を集めて生活している。同じように人類は小麦を集めて生活するようになったわけだ。小さな集まりが大きくなることによって、いろんな障害やトラブルが起こるわけだけれども、それをうまく解決してなんとか協力体制を維持して今がある。そしていつの間にかそれが当たり前になって、そのことですべては連綿と繋がっているね。
隷属
人は農耕によって植物を支配するようになったと思い込んでいる。最近の果物はびっくりするぐらい甘くて美味しい。それは研究を重ねて、交配を繰り返して日々品種改良をしてきたからだ。その結果、野生の実なんて比較にならないぐらい別物になった。そしてその種子が盗まれてしまうぐらいまでになっている。人から見れば植物はまさにこの手中にあると思い込んでいる。けれども別の見方をすればこれまでの人類の歴史において、そういった魅力的な植物に操られてきたとも言えるね。野生のままではそれほど増えなかった小麦が、人々の手によって丁寧に育てられて毎年収穫されているわけだ。もちろんそのほとんどを食べられてしまうわけだけれども、一方でもっと多くの収穫量を求めさせる魅力によって、小麦の繁殖は絶えることはない。その美味しさにやられた人類はまさに小麦のために人生をかけて育ててくれている状態だと言っても過言ではないね。
社会のはじまり
植物の戦略によって、奇しくもムラやクニが形成された。そしてそれが今度は争い事によって戦争が勃発したわけだ。そもそもで言えば植物を植えるための領土拡大のためであり、それがお互いのクニの縄張りが侵されてしまうわけだ。現代になっても未だにうまく解決できずにいる。すべては穀物という植物に操られた結果だね。どんどん増えることによって生存戦略をうまく操っているのはどっちなのかは明らかだ。ヒトを初めとする動物をうまく操って生き残ってきたのが動けない植物であり、その植物に翻弄されているのが動物だという構図がそこにある。植物はそのままでは簡単に食べられないための防御がきちんと備わっている。それを逆手にとって美味しさで魅了してどんどん仲間を増やさせているとしたら、ヒトは未だに植物の生存戦略に翻弄され続けているといってもいいかもしれないね。