あの時と同じ
不安
いつも不安は消えないね。全く恐れを知らない幼少期に戻りたいと思うこともたくさんある。あの頃はよかったとね。毎日が夢のように楽しくて、わくわくして物怖じひとつしないでいろんなことに素直に挑戦できたからだ。ところが大人になるにつれて、人から傷つけられることを幾度となく経験し、全くの無垢ではいられなくなった。心のない攻撃がどれほどあなたの心に傷を追うかがわかってしまったからだ。だからまず最初に自己防衛を緩めることはない。恐る恐ることを始めるようになってしまって結局のところ気がつけば何もしないでいようとばかりしている。波風を立てるのはご法度で、そんなことをしようものなら、すぐにあなたの足元を救われてしまうからだ。一方でやっぱりやってみたいことや、行ってみたい場所があったりもする。その思いは幼少期のあなたと全く同じだろう。
現実
そうやって社会や現実というものが恐ろしく厳しいものだと思っている。もはやあの頃のように純粋で無垢で恐れを知らないままではいられなくなった。でも、やっぱりやってみたいことはたくさんあったりする。それを一つ一つ吟味して、もし失敗したら揶揄されたり批判されたり、もしくはいろんな人に迷惑をかけてしまう恐れから何もしないでいることしか選択肢が残されていないように思っている。それを現実だと受け止めるようになったね。いつまでも子どもみたいに夢物語ばかりではいつまでたっても大人になれないぞという脅しもあって、あなたはクールな大人を演じるようになった。それは本心からではなく、そうやって振る舞わないとトラブルばかりでちっとも前には進まないからだ。でも本当にそうなのだろうか。
大人
夢だけあってもお金という社会の現実に向き合わないと生きてはいけない。けれどもお金ばかり追い求めたところでちっとも幸せにはなれない。でもお金はないよりもあったほうがいいと思っているし、誰にも頼らず、迷惑もかけたくないからそうしているね。確かにお金はものやサービスの代替手段としては万能だからだ。そうして誰かに支えられているという実感も希薄になって、もはや一人で孤軍奮闘しているわけだ。しかしながら冷静に考えれば、誰にも世話にならずに世間で言うところの立派なオトナになった人はいない。どんな人でもたくさんの人に迷惑をかけて、支えられてあなたがいる。そしてそれは皆が迷惑だとあなたを蔑んでいるわけではない。あなたは今も誰かに支えられているし、迷惑をたくさんかけている。なんだ、子どものころと何一つ変わっていないわけだよ。