やっぱり言語能力

日々

忘却

なんでもすべて覚えていられると優秀な人と思われると思っている。勉強がその代表だね。同じ授業を受けて、同じテキストを読み、同じノートを取っているのだけれども、驚くほどあっという間に忘れてしまうわけだ。そこで秀才と呼ばれる人に、どうしてそんなに覚えていられるのか、と聞いてみたところで、そんなもの一度聞いたら忘れるわけがないと答えられてうろたえるだけだ。そうやって記憶力が優秀さのものさしとして使われ続けているのが今の学歴社会の根底にあると言っていい。もちろん社会に出て会社の組織やルールを学び取り、仕事の段取りやその目的を瞬時に把握できる人はやっぱり優秀だとして評価されることが多い。なのにあなたはなぜか一度同じように見聞きしているそれらをものの見事にうっかり忘れてしまっている。どうしてこんなにも記憶力が不足しているのかと嘆くわけだけれども、一度聞いてわからなければ二度三度と反復することで記憶として定着すると言われているから、あなたは何度も繰り返し頑張っているけれどもなかなか追いつきようもないとがっかりしている。

AI

そんな社会が永らく続いてきたわけだけれども、昨今ではAIが騒がれている時代に突入しているようだ。それは細々とした記憶で呼び起こす知識よりも、それらが必要になったときに優秀なアシスタントとしていつでも外部記憶装置のようにあなたの代わりにすべて調べて答えてくれるスグレモノだね。だから忘れっぽいあなたにとってはとても頼りになる相棒となる可能性が高まってきた。もはや覚えきれない膨大な文献や知識をいつでも教えてくれるし、それをベースとしていろんな提案までしてくれるわけだからね。いい時代になったと感じる部分がたくさんあるだろう。ところがそれらを活用しようとはりきって使ってみようとすると、あらたな障壁がそこに立ちはだかることを知る。はてさて、どうやってAIに質問すればあなたが望む答えにたどり着くことができるかという問題だ。なんでも知っている物知り博士を眼の前にして、何をどう聞けばいいのかに今度は悩んでしまうわけだ。

言語能力

そこでハッと気づくことは、忘れっぽいことは大きな問題ではないけれども、普段から読み書きしている言語能力はやはり求められるということだ。そしてそれが会話であったとしてもそれを目的の結果に導くだけの基本的な知識と語彙は必要だということだね。そこであなたは再度絶望することになるわけだ。結局のところやっぱりAIを使いこなすための最低限の語彙は必要であり、もちろんそれらもAIに聞きながら進めることはできるけれども、その回答自体を理解できるぐらいの文脈を読み取る力は必要となるわけだ。一周回ってやっぱり基本的な言葉を操る力は最低限ないとどうしようもない結果で終わるというオチになる。ただし、それらをまたどこかで教えてもらうことまでは必要がなく、基本的な言語能力でさえAIに教えてもらうことができる時代だ。だから少しずつでもいいからとにかくたくさんの文章に触れ、読み解く力をつけていくことがやはりこれからも必要最低限だということだね。そういう意味ではやはり世界は言葉でできているわけだ。