自然消滅
正しさ
すでにあなたのスマホには膨大な知識にアクセスできる機能が備わっている。最近のAIなんかでちょっと知らないことを尋ねると、すぐにその解説がかえってくるわけだからね。もはや先生や授業なんていうのも特別な存在でもなく、その地位が危うくなっている。あなたからすれば少しの電気代と通信代を払うことができればおおよその疑問は解消されるわけだ。そういう意味では正解は、完全に空気と同じ価値となった。もちろんそれなしでは生きてはいけないけれども、だからといってそれそのものは潤沢にあるわけだから特別な希少性や価値は薄れてしまった時代となったわけだ。さて、そうなっていくこの世界には、大いなる変革が起こるだろうと想像するのは容易いわけだね。これまで物知りや博学はとてつもない価値がそこにあったわけだ。それだけの知識を得るためにはそれ相応のコストがかかっているからだ。ところが、そんなことしなくてもすぐにアクセスできる環境がしばらく続けば、わざわざ何かを調べるために国会図書館の蔵書や、大学に保管された論文や書物を探し求めること自体が消滅していくのだからね。
見えないコスト
その一方で、ずっと動き続けるデータセンターやネットワーク機器は休むことなく動き続けている。その裏側には実はとてつもないコストが注がれているわけだ。それらを稼働させるための半導体や電力のコストはあなたの想像を絶するぐらい大きなものだ。あなたのスマホの電気代や通信料なんて小さなものだと思いこんでいるけれども、そのインフラを支えるためのエネルギーはかつてないほど肥大化している。日々の便利さを支え続けるために犠牲となっていて、それこそ自然環境へも影響を及ぼすぐらいの大規模なものとなっている。すなわち、あなたの便利さはなにか他のものを犠牲にして初めて得られるものであり、そういう意味ではエネルギー保存の法則がこの世界では避けられないね。いつでも引き出せる巨大な外部記憶装置であるデータベースを稼働させ続けることが環境破壊を招いていることなんて知らないままのほうがいいかもしれない。もし機会があれば裏側の大量の機器が唸りを上げて稼働し続けている状態を見てみるのをおすすめするよ。
紙とペン
電子化されたデータは復号するにも決まりがあって、それが失われてしまうと単なる0,1の信号と化すわけだ。その決まりがわからないと復号できない無意味な羅列となってしまう。今や人類の叡智は大いに記号化されていくわけだけれども、そのゆらぎが人間らしさを生み出している。多少のエラーが愛らしく感じるのも、実はそういうエラーこそがあなたを形作っているとも言える。すなわち、いずれおかしくなったり、ごっそりと読めなくなっていく無尽蔵のデータが生まれるのもあなたと同じとなる。そして万能だと思われていたそれも、常になんらかのバグや欠陥が発生し続けるのもあなたと同じだ。そしてそれらはどう頑張っても自然の一部からは逃れられないわけで、物理的ななにかにとどめておくとそれ自体がモノとして壊れてしまう日がくるね。あなたの個人的なスマホでもバックアップデータがなければ、物理破損した場合に復活させることが難しいようにね。もしかしたらこれまでに何度か経験しているかもしれない。したがってそれほど心配しなくても、AIが万能だと騒いで久しいけれども、いずれは消えてなくなるのは避けられない運命だということになるわけだ。
