熱い心臓

バイク旅

定期メンテ

定期的にタイヤの空気圧をチェックしたり、充電したりしているんだけど、バイク駐輪場でそれをやっていると、もうひとり違うバイクに乗ってお出かけする方と目があった。目があったのでお互い会釈する。そうなると不思議なことにバイク乗り同士はよっぽど寡黙な方でない限り色々と会話が始まるね。ずっとこの体験をしているんだけど、自動車ではよっぽどのスポーツカーとか、今だったらキャンピングカーとか特殊な車両でもない限り、知り合いでもない方に会釈したりしないよね。よく考えてみるとなんでだろうね。バイクってやっぱり際立った特殊車両という感じが強いのかな。やっぱり。

どんな感じですか?

そのバイクはいい感じですね。実際乗ってみてどうですか?なんて質問が必ず来るので、端的に手慣れた感想を返すんだけど、そもそも印象とか、感じることは人それぞれ違うね。だからこれがなんかの参考になるのかなぁなんて毎回心のどこかで思いつつも丁寧に答えているね。まぁ、おしゃべりが好きなだけっていうのもあるけれどね。そっちはどうですか?今日はどこまで走るんですか?などとたわいのない話をしながら、お互いのバイクに対する愛情みたいなものを探っているね。もちろん色んなパターンがあるけれど、謙遜したり自慢したり、人それぞれのスタイルがあるけれど、でもどこかにバイクに対する愛情が見つかるもんだね。いつかは憧れのバイクに乗りたいとかほとんどの人は言うけれど、でも今このバイクでも結構楽しんでいることには間違いないみたいだね。

楽しさは比べられる?

そもそも乗っていて楽しい時間はそれぞれに確実にあって、それぞれがその瞬間を楽しんでいる。もちろん憧れのバイクにはその瞬間がもっともっとたくさんあるという期待値が大きいのだろう。でもどこかで知っているね。まずは眺めて、そして乗り出してから止めて降りるまで、ずっと快適で楽しい時間だらけではないということを。渋滞に巻き込まれようと、細い道で行き止まりになろうとも、お土産をたくさん積んで帰ろうとも、どんな悪天候でも、全部楽しいのは、実は手に入れたはじめの頃だけかな。全部快適で楽しい感じが、やがて日常になっていくのは心のどこかで知っている。まぁそれでもスペシャルな時間を楽しんでいるんだけれどね。今乗っているバイクでも十分にスペシャルなんだよね。ワクワクとかそれに伴う楽しさを比べるってどうすればいいのかな。

熱くないですか?

そうやって、人の感想を自然に知りたくなるのは、自分の経験と比べることによって、今自分のバイクの良さを改めて浮き彫りにするためなのかもしれないね。どんなに優れたバイクでも、機械である以上、全部100点であるわけではない。ちょっと自分しかしらない弱みを見つけたりしてさらに愛おしくなったりするね。完璧じゃないからそこに個性みたいなものを感じるのかな。乗っていて快適で一分の隙もなかったら、もしかしたらすぐに飽きて手放してしまうかもしれないね。
最後の質問で、乗っててエンジンが熱くならないですか?と聞かれた。特に夏場は火鉢の上にまたがって乗っているようなものだね。それをなんとか走行風でライダーに直接熱気が当たらないような工夫はされているけれど、渋滞で止まったらモロに直撃するね。内燃機関は燃料を燃やしてエネルギーを取り出すものだから、解決策はエンジンを股の下に置かないようにするしかないんだけど、今のところ、スポーツバイクはその位置を変えようとはしていないね。スクーターがそういう意味では工夫された乗り物なんだけど、それを選んでいないということが答えになるのかな。「熱いのは熱いねぇ」となんだかよくわからない回答をする。「やっぱそうですよねー」となぜかお互いに笑って会話を終えた。バイクに乗らない方からすれば、こんな謎の会話はないだろうなぁ。自分でもなにかの合言葉かよと思ってしまったよ。