客席から見ているあなた
何もしない
おそらくは日々激務に追われて、何もしない日なんて数えるほどにしか経験していないだろう。せっかくの休日にも、いまこそ趣味をやらねば、とか、どこかに出かけて充実した日にしないと、なんて平日よりも気合が入っていたりする。ただぼーっとして時間だけが流れていく状態なんて、もったいなくて耐えられないかもしれない。あるいは休みだからこそ、十分に休まないとやっていけないと思って、寝転がって休息することに全力を傾けたりしていることも、同じことだ。何もしないじゃないか、と思っているかもしれないけれども、そうではなく休まなければならないという義務感でいっぱいになって、休むとは、ということを意識している段階で何もしない日とは言えないわけだ。とにかくサボるにせよ、出かけるにせよ、勉強するにせよ、何かをしない日はおそらくほとんどないだろう。逆に休むでもなく、なにかやるでもなく、ただ無の境地で過ごす時間なんて、逆説的にはこれまで全く体験してなかったという驚きの事実がそこにあるね。
思考と行動
それはすべてが思考偏重な生活スタイルによるわけだ。何をするにも考えて、思慮深く行動に移すというクセがあなたの中で出来上がってしまっている。でも最新の脳科学においては、実のところそう思っているのはあなただけで、あなたの行動すべては思考の前に起こっていることがわかっている。すなわち、実際あなたの思考は行動のあとに形成されているということだ。あなたが思っているあなたとは全く違うわけだね。あなたは配慮や思慮を中心に、それをやるべきか、やらないままにするかをコントロールしているつもりでこれまで生きてきた。しかしながら科学的には全くの勘違いで、行動はあなたの意思とは関係なく起こっており、そうしたあなたを見てから辻褄を合わせていたということだ。それを知ったあなたは、驚愕するかもしれない。あるいはそんなことはないと反論したくもなるだろう。しかしながら残念ながら、多くの検証によってへんてこなそういった結論になるらしい。
心身別離
これまでは、あなたと思考を同一視してきたし、おそらくはあなたの肉体はあなたの支配下にあって、手足も含めてあなたが自由にコントロールできると思い込んできた。けれども実のところそうではなく、思考と肉体があべこべになっていて、それらの主従関係が逆だったということだ。すなわちあなたが抱える自己と、肉体は連動していない。もっと正確に言えば、肉体が先で、思考があとだということ。そしてあなたの実態はどちらかといえば思考だと思い込んできたわけだけれども、実際はまるで逆だったわけだ。だからいつもあとづけの理由を瞬時に書き起こしてきただけのことであって、先に肉体が動きだしたあとを追いかけてきたとも言えるね。昔から頭でっかちになりすぎると良くないということを言われてきたのは、それらを示唆している。そもそも思考は何もしていないとすれば、あなたはどこにいるのだろう。映画館でスクリーンに映されたあなたらしき主人公を眺めて、辻褄を合わせてみている観客の一人なのかもしれないね。
