大舞台の名脇役

日々

仮面

あなたは仮面を被っている。それは社会的に適合しなければならないという習慣から必然的にそうなってしまうわけだ。家で寛いでいるときも、優しい妻や夫として振る舞い、会社へ行けば肩書を背負った役割を果たさねばならない。帰り道にコンビニで買い物をすれば、客として演じるだろうし、満員電車に乗れば毎日通勤するサラリーマンに映るだろう。そのたびに服装や装いを変えて、それぞれに適しているとされているように表面上も変えているわけだ。そしてその幾重の仮面をこれまで毎日付け替えてきた。これは何も大人に限っての話ではなく、子どもたちもまた、そこにふさわしい振る舞いを不器用ながらも毎日訓練している。学校での振る舞い、先生と対峙する生徒らしさ、そして放課後友達と遊ぶ楽しむ自分、そして門限を破ってしまったときの悲しい顔、そういうことをすべてひっくるめて生きる力と呼んでいるわけだ。それは決して知識量や与えられた問いに答える力ではなく、いわば即興劇みたいなもので、その反応一つ間違えただけでその後大きくシナリオが変わってしまうことばかりだとも言えるね。

一部

そういう意味では物語がずっと続いている。しかもあなたが想定していた台本通りにはほとんどうまくいかないことばかりだね。そして都度その場であなたは全身全霊のリアクションをするのに必死だろう。もちろん、そうでもなく、あなたが思い描いた通りのとき、少しばかりの余裕があるときもある。そしてあのときになぜあの一言が言えなかったのかと悔やむ日々も、首尾よく演じきれた日々もすべてがあなたが主役のドラマとなっていくわけだ。さてそこであなたはやっぱり、できれば望む物語を演じたいと強く思うだろう。けれども悲しいかな現実は、あなた中心には回ってくれないようだ。そうして、あなたは自らが主役であるストーリーを描こうとしているけれども、実のところはあなたは大舞台の脇役の一人でしかないことに気づくことになる。あなたが主役ではないという現実を垣間見たとき、あなたは大舞台のそれをどうやっても知ることはできないという事実を突きつけられてしまう。一部は全体を知ることはできない、けれども全体は一部を知ることはできるわけだからね。

要素

それでもあなたは全体として生きているには違いない。その秘密である全容を俯瞰することはどうしてもできない。けれども間違いなく言えるのは、一部として今ここにいるということだからね。そしてそれは理解することはどうして不可能だけれども、確実に全体に包摂されて生きているという一点だ。それだけですでにあなたは物語を完結しているとも言える。そう、あなたが主人公ではないにせよ、あなたが大舞台の一員としてそこにいる事実だけで、あなたは全体としても間違いなくそうであるわけだ。もっと言えばあなたはすべてに対しての欠かせない要因としてそこにあり、あなたが思い描くストーリー通りになってなくても、それがあなたに課せられた重要なミッションでもあるということなんだ。だから、ちょっと今まで思っていたのと違うかもしれないけれども、やっぱりあなたはそうでなければならない役割なんだよ。うまくいかないと嘆いてみても、首尾よく成功して喜びにあふれたとしても、なんだつまらないとがっかりしたとしても、あなたには決してわからない世界では、間違いなくあなたは名役者として称えられているから、安心していいわけだよ。