いつもみている
あなたの顔
会社ではキリッとした面持ちで目の前のタスクをテキパキとこなしている。その時は優秀な会社員っていう感じでそつがないね。そして就業時間が過ぎて会社から一歩外へ出て、コンビニに入った瞬間は、お客さんに早変わり。あれこれとおつまみや新作スイーツを探しているね。その後電車に乗って揺られてウトウトしていると、疲れて眠たいという人になる。そうして自宅に着くと、はぁーと大きなため息ひとつ。あなたはその時に本当の素性がこれだという役を演じている。そうしてあなたの顔はその時々において目まぐるしく変わり続けている。そのことに気づいているかな。
ひとり芝居
そんなふうにいつもその時々において、それに溶け込むように七変化しているね。それもおそらくほとんどが無意識に変化できている。そういう意味では名演技をこなせる役者ということになるね。これが社会的な人間生活そのものを表している。あなたはその中で本当のあなたを探し始めたりする。けれど、本当のあなたという定義がすでに嘘のあなたを生み出しているという矛盾にぶつかるね。あなたに二重性があるとすればそもそもあなたという概念そのものが怪しいということになってしまうからね。
あなたがいる時
ではさまざまな状況で、それらに溶けこむように演技しているとすれば、一体それはどうしてだろうか。それはそうすることで常にあなたはあなたをそこに感じている。役割を与えることによってもともと曖昧なものをはっきりくっきりと分別することができる。あなたはお店で働くときは店員となり、店を出て他の店に入れば客となり、店から外へ出て家路を急ぐ人になる。その場とあなたは常に切り離されることによってあなたははっきりとあなたを浮かび上がらせている。それが社会的な役割としてのあなたの正体だね。でも、おかしいとあなたは気づいているね。だって演じているあなたをみている誰かがいつもいるからね。あなたをみている誰かは一体何者なんだろうね。