勘違い野郎
なんのために
音楽が好きだから、ミュージシャンになりたいと考えたりするね。好きなことを仕事にしたら、ずっと楽しく幸せな人生が待っていると夢見ている。だけど実際は全く違ったりするね。お菓子作りが大好きで洋菓子店に勤めている人は、それで夢がかなったようなもの。それこそ毎日が楽しくて幸せな人生に見える。けれどその羨ましく思っている周りよりも、本人が一番そうじゃない状態だったりもするね。どうやら理想の暮らしや夢なんかは実現してもしなくても幸せとはリンクしているわけではないのかもしれないね。
ギターを抱えて
いつもギターを抱えて決まったスタジオで練習三昧。もちろん帰って自宅でも練習するんだけれど、もちろん思ったとおりに弾けるフレーズが増えたとしても、全体的には頭打ちの感覚を拭えないね。ずっとギターと向き合ってきたからこそ、上手い人なんてたくさんいることに気がついている。もはやその領域で勝負するなんて思ってもいなくて、技術的にはそれほどでなくても自分が歌いたい歌を奏でられるギターを求めている。それさえも、どこをどうしたほうがいいのかをいつも考えているんだけれど結論が見えない。でも練習終わりにメンバーと一緒に食べる一杯490円の醤油ラーメンが癒やしのひとときとなっているのは感じているね。地下のスタジオのカビ臭い匂いからチャーシューの香りに切り替わると、まるで世界が切り替わったように感じていたね。
いつも夢はかなっている
そう、いつの間にかかなっていたのは、いつまでも下手だったり、メンバーと揉めたり、いつも遅刻するリーダーに怒りをぶつけたり、その後一緒にラーメンすすったりすることだね。重たいギターはメインではなかったんだよ。音楽はなにかに夢中になる仲間がいて、その連中と人生の経験を重ねるための道具に過ぎなかったんだ。それに気づく頃にはかなり時間が過ぎ去ったあとになるけれど、気がつかないよりはいいかな。でも気づいても気がつかなくても夢中になった人生こそがより充実した人生と感じるだろうから、もしかしたらどっちでもいいかもしれないね。そうやって勘違いを繰り返すためにあなたの人生はあるんだから、これからもおおいに勘違いをやろうよ。