迷宮入り
欲望
例えば欲しいという感情は、近代の感覚であって永遠の本能ではないようだね。生物的な欲求として、食欲、性欲、睡眠欲と3つ挙げられているけれど、どれも過剰になることはない。したがって欲するがままに行動したいなんていうのは幻想なんだよ。そういう感情を巧みに操作してあなたを惑わせている。そもそも欲するというのは不足が前提になるから、あなたに伝えることはいつも足りないという嘘だけで十分だね。それをうまく利用したのが現代社会。資本主義社会は特に欲望加速装置のようなもの。あらゆるものをあなたのものにできると思い込ませて、ついには土地や水まで売買できるようになっている。いつもお金さえあれば欲するものはすべてあなたのものですよ、なんてマスメディアやネットで喧伝している。その渦の中であなたはそのお金さえあれば、と唇を噛み締めて我慢しているね。お金も地位も土地も宝石も何もかも常に足りない世界を生きることになる。
所有
今はシェアなんていう感覚が増加し始めて、かつての所有にこだわることが少なくなってきているみたいだね。そうすると資本主義社会の前提が大きく揺らぐことになる。かつてはモノをたくさん作れば作るほど売れるという大量生産が社会を豊かにしていた。今は作れば作るほど余ってしまう時代。かつてのようにモノが売れない時代で、モノよりサービスや体験を売る方がうまくいくみたいだね。誰のモノとかにこだわることの幻想から少し目が覚めたということかもしれないね。そもそも私のモノ、あなたのモノなんていうのが第三者からはどう見ても理解できるわけがない。だからこそ文字で紙や石版に刻む必要があるんだよね。私のモノっていう主張は命の続く限り主張し続けないとすぐによくわからなくなってしまうほど、マヤカシでしかない。そもそも裸で生まれてきたあなたが、どうして毛皮のコートを失うことを恐れるのかな。
正義
あなたはいつも誰かに支配されたくて仕方がないね。自分で考えることはどちらかというと苦手だからね。何も指示がないと途端にどうしていいかわからなくなる。それで悩んでいつも不幸を楽しんでいる状態だよ。そういうと反感を感じるだろう。けれどそれがあなたが満たされない状況のからくりなんだ。その正義はあなたが自ら生み出したと勘違いしているけれど、どれもこれもがすべて誰かに押し付けられたものしかない。その正義のせいで、あなたは心を悩ませることができる。例えば軒先にあったおいしそうなリンゴを思わず黙ってとって食べたりする。それはあなたは誰かから押し付けられた正義のせいであなたを責め続けることになるね。どうしてそんなよくないことをしたのかと。おいしそうなリンゴをとって食べることは自然なことなのに、正義という悪魔の経典であなたは苦しみ続けることになる。そして正義は原因という犯人を特定するためになにかを犠牲にし続ける。リンゴが食べたいという思いには犯人なんていないのに、おそらく適当にでっち上げて満足しているのも実は正義の正体なんだよね。原因なんてどこにもない。これもあるように見せているマヤカシなんだよ。