星の瞬き
ここにいる理由
ふと目覚めたあなたは一瞬だけここはどこかを見失うときがあるね。そして即座に記憶をたどってこれまでの経緯を探し当てると、状況がぱっと把握できてあなたはあなたに戻る。変な言い方だけれどそうだね。これまでのことを思い出すのに時間がかかっている状況を寝ぼけている状態と言うんだろうね。ぱっと目覚めた瞬間はあなたは強くあなただと感じているだろうか。それを今度確かめて見るといいと思うよ。とはいえ、起きたばっかりのときにそれを思い出すのは至難の業だろうけれどね。ぱっと目覚めたとき、ああ、いつの間にか昨晩小説を手にとって読もうとしてベッドに入って、ほんの数ページを読んだ瞬間に眠ってしまったのか、という前回のあらすじを思い出し、その連続で今日が始まるんだけれど、もしそれがどうしても思い出せなかった場合は、新しいあなたがそこにいてベッドには見知らぬ小説が転がっていることになるね。
生まれ変わる
眠くなってうとうとしている。そのときはとても心地よい時間だね。ああ、もうそろそろベッドに行かないと、なんて思ってフラフラベッドに入る。そしておやすみなさい、また明日ね、なんて挨拶をして眠りにつくね。このとき明日がこないなんて微塵にも思っていない。明日はどんな楽しいことがあるのかな、と期待に夢を膨らませて眠りにつくことが多いね。そして眠って気がつくと朝になっている。その目覚めた瞬間にあなたに戻るのは先の通りだね。さて、眠っているときはあなたはどこにいたのかな。肉体はベッドの上にあったんだろうと推測はできるね。意識としてのあなたというか、いつもの本当のあなたはどこにもいなかったのではないかな。
生と死のはざま
生きるとは生きていると思い込んでいるあなた。死は認識できない。あなたは生まれた瞬間と死はどうしても体験できないね。ただ似たようなことは毎日、もしくはいつも起きている。いつものこと過ぎて気がついていないけれどね。眠りにつく瞬間まであなたはあなたを感じられるけれど、眠った瞬間はどうしても捕まえられないね。そして目覚めた瞬間に記憶をフル回転で思い出すけれど、これが万が一何もなくなってしまえばあなたを再生して続きのドラマは見られない。ということは、生きているということは単なるストーリーというデータでしかないというわけだね。書きかけで未完成の小説「あなた」を記録しているに過ぎない。それも昨日のあなたと同じという証拠はどこにも見つからないね。記憶ってそれほど曖昧なことはあなたが一番良く体験で知っているはずだね。ということはあなたは毎回微妙につじつまが合わないことも珍しくないということになるね。もしかしたらあのことも忘れてしまっているかもしれないけれど、忘れてしまっていることすらわかっていない。あなたはこの瞬間にいてそして毎回消えている。点滅する光のようにね。