あてのない旅
持ち物リスト
旅をするとき、必要だと思うものをぽいぽいとバイクに積んでいくんだけれど、積める量には限度がある。車で行くなら気にせずどんどん持っていけるし、いるかいらないかで迷う時間がもったいないのでとりあえず積んでしまえばいいね。でもバイクの旅はここが一番の醍醐味だと思うんだけれど、持ち物リストにエントリーしても最後には厳正な審査によって今回の参加は見送りなんてアイテムがたくさん出てくることだね。せっかく新調したキャンプ用品なんかも泣く泣く家においていくこともしばしばある。出発前に最小限だと思っている道具を上手に積めれば、それで旅の半分はすでに終わっている。準備の段階でもう旅のど真ん中ってことだね。
問題視
そうして厳選した旅道具たちを持って走りだすわけだけれど、ここでまた面白いことが起こる。欲張って上手に積み込めたそれらの精鋭たちは、大抵の場合多すぎるんだよ。だから持っていったものの一度も活躍の場もなく持って帰ってくるものがどうしてもできてしまう。なんとかやりくりして上手に積んだからこその弊害でもあるね。ちょっと隙間があってまだ余裕があるぐらいが実はちょうど良いんだよ。なんとかあれもこれも上手な空間パッキングで解決したところで結局は無駄を生み出すんだよ。どちらかといえば旅先で足りないぐらいがちょうどいい。お土産を積んで持って帰る心の余裕も生まれるし。とはいえ、実際にはそんなにお土産だらけになることもないのだけど、なぜか身軽な方が充実しているのはどうしてだろうね。余白の大切さをそこで学んだりする。多少の不自由さを感じてもおおよそそれらは問題ですらなかったことに気づくね。ああ、あれがなければと思い込んでいるだけ。普段はそういう思い込みから大袈裟に問題視して大騒ぎしているだけなのかと呆れたりする。
あてのない旅
毎日生きることにおいて、実はモノはそれほど重要ではない。もちろんテントや寝袋はあった方がいいけれど、なければないで別の方法が実はたくさん残されているね。途中で壊れたりするとよくわかるけれど出発前にこだわっていたものは一度使ったらそれほどでもないことに気づくね。結局普段の生活でいつも悩まされている問題事はすべてが思い込みにすぎない。実際持ち物をずいぶん減らしたと思い込んでいるけれど、それでも多すぎる。どれだけ絶対必要だとか、必ず欲しいとか、それを手に入れるためにどれほど苦労したとか、そういう問題設定をあなたが勝手にしている。それをこれまで何度も繰り返していることが見えてくる。だからまた行きたくなるね。大自然の中でぽつんと一人。何も手にしなくてもずっと大いなる何かに守られていたんだと思い出す瞬間。予定や計画なんかも不要なのは、目の前のことに対処していくだけで大丈夫と知っているからなんだ。ああ、風に吹かれてまた旅に行きたいな。