見てて
バランス
足の指を少し怪我しただけで、まっすぐ立っていることも難しくなったりして驚くことがあるね。特に動作には問題はないだろうと思っていたところが、実はとても重要なバランスを保つ役割をしていたことを怪我をしてから気づいたりする。それぐらい無意識にやっていたことが、どこか少しだけ調子が悪くなるとうまくできなくなってびっくりすることが多いね。そう、あなたは特段今日はうまく立ち上がってやろうと立ち上がる前から念入りに計算と計画を立ててやっているわけではない。そんなことより、意識は冷蔵庫のお茶なんかに気を取られていて立ち上がって台所に向かう行為そのものは全く意識外の動作だね。それで殆どの場合は首尾よく動作して絶妙なバランスで冷蔵庫に歩きだすことができている。うまくいくもなにもそんなレベルではないね。でもあなたが外からそんなあなたを行動学的に見れば絶妙なバランスで2足歩行している動物で驚愕に値する運動能力を持つ動物であると定義づけるだろうね。
無意識
自転車やバイクに乗っていても、乗れない人からはどうしてそんな絶妙なバランスをコントロールできるのかと不思議がる。スキーやスノボなんかも理解ができないね。自然に乗りこなしているあなたはなんとか理論的に解説しようといくら頑張ってみても、なかなか説明がもどかしい。さらに聞き手も一所懸命にその理屈を体験に置き換えてみようと試みるも、実際の絶妙なバランスを取るために力の入れ具合が数値でコントロールできるわけではないので、何度もトライアンドエラーするしかない。それで大概できるようになるときは、そんな数値なんて忘れてしまってエイヤッと疲れて無意識に全身の力が抜けたその瞬間だね。一所懸命意識的に身体をコントロールしようとしているときは何一つチグハグになって、むしろいつも何気なく動作していることすらおぼつかなくなる。そんなことよりイメージだけを持ってあとは忘れてしまうと一瞬でできたりする。そのときに「!」となるけれど、「!」は言語化すると遠く離れた別の物語になってしまうことが多いね。
うまくやらない
だからうまくやろうとしないことがうまくできるコツだとか意味がよくわからない説明をされてたりするわけだね。困っているあなたからすれば人をバカにしたような表現にしか聞こえない。けれど、何気なくできている人に説明を求めるとそうなることが多いのは、本当に実感としてうまくやろうとしていないからだね。もっというと何かをしようとすると必ずバランスがおかしくなるのは、力を抜いて待っていればいずれその瞬間が訪れるように決まっているからなんだよ。それなのにあなたが変にしゃしゃり出てそのバランスを固定しようと邪魔するからできないってわけだね。いやいや、今までもこれまでも首尾よくそつなくこなしてきたのはあなたが積極的に自ら掴んだものだからと思っている。けれどそれはそうなるシナリオ通りになっているだけで、更にいうとあなたがそこにいなかったからこそうまくいったんだよ。あなたはあなたの物語にいつも邪魔をしている。先の足の指の怪我みたいにね。だから先人は「うまくやろうとするとうまくいかない」というトートロジーのような言葉を残しているね。あなたはあなたをじっと見ているだけがあなたの役目なんだよ。だた見守ればいいだけなんだよ。