手ぶらでブラブラ
手放す
基本はどんな乗り物に乗るときでも、荷物を持っているときでも、子どもと手をつないでいるときも「しっかりと手を掴んで離さないでね」と言うことが多いね。忘れ物や落とし物につながるので、とにかく手で掴んだなにかはしっかりと力を入れなさいというアドバイスが多い。掴んだら離さないなんていう営業用のキャッチフレーズもあるぐらいだね。それになぞらえてかどうかはわからないけれど、例えばいい人に出会ったらその人をしっかりとつかまえなさいとか、いい会社に就職したら嫌になっても途中でやめたらもったいないとか、せっかく苦労して手に入れたマイホームは絶対に手放してはいけないとか、なんだか簡単に手放すことを良しとしない傾向が強いね。そういうことを無意識に植え付けられることで、本来ならすべてすーっと通り過ぎていく苦しみなんかもあなたが堰き止めるせいでなかなか離れなくなったりして余計な苦しみをさらに生み出している。
手ぶらは気持ちいい
例えばコンビニに行くために家から出た瞬間に、とっても心地よい風を感じてあなたはご機嫌だね。そういえば随分季節が進んで過ごしやすくなって、暑いでも寒いでもなくとっても丁度いい。夕焼けの光がちょっと眩しいけれどそれ以外は完璧な瞬間だね。それでお目当てのものを買おうとしたときに、ああ、品切れ。なんてついてないんだと普段ならここで気分が落ち込む。けれど今日はとても風が心地よいから、もうちょい先のコンビニまで足を伸ばすかという気になる。それもどちらかというとその方が良かったぐらいな気持ちの良い状態だからだね。いつもこんな風に感じることができれば、今よりもずっと息苦しさがなくなるはずなのに、なんて思ってちょっと笑顔で歩いている。それぐらい気持ちいい季節になったなぁとしみじみ感じつつ夕焼けに向かって歩を進めている。
何も掴まない
そうやってはじめの計画とは全く違って、ちょっと時間がかかってしまったけれど目的は完遂したね。おお、なんだかんだ言ってやりたいことはすべて叶っていることに気づく。もちろん、本来はもっと手短に済ませる予定だったけれど、実際は気分良く遠回りした。遠回りはネガティブなワードだけれど、全く不幸な感じはそこにないね。なんならいい季節の散歩としてはとても良い体験をしてちょっと得した気分だね。ああ、すべてはこういうことかとそこで気づくこともできた。コンビニで手短に所用を済ませるためにでかけたあなたが、近所のコンビニではそれが叶わなかった。そこだけ切り取って掴み続ければ「ああ、なんてついてない日だ」と嫌な体験としてわざわざ残してしまうことになる。そうすると対応してくれたバイトの店員の言葉遣いや態度なんかも気になってきて、それにしても何だあの言葉遣いは、とか、余計な尾ひれがついてさらにブルーになるね。すぐにあなたは、別のコンビニに向かうことにした。品切れだったことをすぐに手放したわけだ。トータルで見たりするとちょっと遠回りした分不幸と思ったりするけれど、ま、そういう見方をするかもね、と思ってそれも手放す。出来事に良い悪いという色がついているわけではなく、その色を塗っているのはあなたなんだからね。それができたのもとっても心地よい天候だったからだね。でもそのちょうどいい季節も明日になればそこにない。そう、あなたの言う幸や不幸は実はどこになく、相変わらず出来事は色々起こってあなたの目の前にあらわれては消えている。あなたはそれに固執しなければずっと叶っている状態が続いているってことだね。