絵空事
真白なキャンバス
あなたの目の前には白いキャンバスがある。あなたはそれを何色に塗っても良いし、塗らなくてもいい。気が向くままに筆と絵の具で好きななにかを描けばいい。そうすると今までは全くそこになかったものが現れるね。そんな何気ない日常風景だけれども、隣のネコはとても不思議そうにそれを見ている。なにもない白い世界が急にあなたが思う何かに変わったんだからね。何かを生み出すことができる力っていうのは、それこそ現実にそうやっていつも発揮しているわけなんだよ。社会を変えるとか世界を変えるとか話が大きすぎてついていけないと思っているあなたでさえ、教科書に落書きをしてパラパラ漫画にして遊んでいたとすれば、そこに浮かぶアニメーションはまさにそのときに生まれて、そして消えたわけだね。
あなたがやったこと
そう、この世の中のあらゆることはあなたが生み出したことなんだよ。そういうとまたまたそんなことはないと思ってしまうだろう。それはあなたがそうしているとは思わせないようにいろんな仕掛けがそこかしこにしてあるからなんだ。劣等感を常に与えられるように、幼い頃から他人と比較され、並べられてくることが当然だったね。そして一等賞になれば褒められ、そこそこならそこそこだと言うそれなりの何かの仕打ちが待っていたはず。生まれて物心がついた頃からずっとそうやって来たからそれに慣れっこになってそれ以外の何かは全く思いつかない。だからいつも褒められたい、認められたいと思ってあらゆる手段を息を吐くようにできるようになっている。もはや無意識で反射的に嘘をついてしまうのは、あなたが悪いわけではないね。そうやって素直になるとあなたが思っている以上に不安定になるような世界に仕掛けられているからなんだ。
なすり合い
この世をあなたが生み出したということに関して、あなたにはその責任がある。だからあなたはすべてあなた次第だということも知っている。知っているからこそ咄嗟に誰かのせいにしてしまうね。引き受けるのがとてもつらい。あなたのせいだとは薄々感じているからこそ誰かのせいについついしてしまう。そして良いことはもちろん全部あなたの手柄としてもっと褒められたいし注目を浴びたいと思っている。だから人は皆かまってちゃんだね。かまってほしくて仕方がない。だけれどもかまってほしいときにはかまってもらえなくて、都合の悪いときだけあなたは責められるから咄嗟に踵を返す発言をしたりする。そうやって楽しかったり辛かったりする世界をやっぱりあなたが刻々と生み出している。いやいやその割には全くあなたの思い通りの世界になっていないじゃないかとあなたは反論するだろう。そのあなたが思い描いている理想の世界こそが、まさにかつての教科書に描いたパラパラ漫画の中にある。そしてあなたはすでに教科書の中にあなたの世界をそこに生み出した。ほら、やっぱり絵空事だけれどまさにそれはあなたの世界そのものだね。今もその続きなんだよ。