今をつかまえに

日々

遅れた世界

あなたの意識が認識することができるのは0.5秒後だと言われているね。だからあなたが「今」と思っているこの世界はもうすでに「過去」なんだよ。認識の仕組みの限界で、どんなに速い処理能力をもったスーパーコンピューター並の処理能力を誇る「頭脳」でも、どうしてもタイムラグが発生してしまうわけだね。脳の信号を計測する装置をつけて、何かをしようとしたと決めたときあなたはボタンを押す実験を行ってみると、あなたが思う0.5秒前に脳は動き出していることがわかっている。これもタイムラグがあって、今だとあなたの意識がそう思っているけれど実は脳はその半秒前にすでに決定して司令を出し始めているというわけだ。そんなあなたでも練習すれば時速140キロの速さのボールを打ち返すことができるようになる。これは先の先を計算して身体が反応してちょうど物理的にピッタリ合致することで成功する。これも正確には打つ動作自体は身体が動き始める随分前から司令を出し始めているわけだから、司令を出しているときは目で認識はしていない状態に近いね。まだボールがピッチャーの手元を離れていない状態で打ち始めていることになる。

意識

あなたの意識はいつも「今」を捉えて瞬時に判断して適切に行動していると思いこんでいるかもしれない。けれど実際はそのほんの少し前から計算して信号を身体に送っている。そしてあなたの意識がそれを認識するのにも遅れているわけだから、あなたはずっと遅延したまま今だと思いこんでいる。そしてそれはずっとそうだね。正確にいえばあなたは今この瞬間を生きたことは一度もなく、すでに遅れて出力される結果の世界が今だとおもっているに過ぎない。さらにあなたの意識は全部遅延した過去だけれど、脳はその先を感じ取ってあなたの意図なんかは無視して先に動いているわけだ。これでわかることは、ゲーム実況で配信画面が遅延するみたいに、あなたの見ている世界は実際のゲームのプレイ画面ではなく、その配信画像でしかないということ。結果だけしか見られないけれど後付でそれはあなたが自ら選んだ意思によるものだと言い張っているわけだ。そう考えると意識ほど曖昧で不安定なものはないね。さらにこの意識は必ず1日のどこかで途切れるようにできている。要するに睡眠時間だね。眠ってしまうと夢をみることもあるだろうけれど、大抵はそれまでの世界が必ず中断される仕組みになっている。昨日のあなたと今朝のあなたが同一人物であるという保証は実はどこにもないね。

腹話術

声が遅れて聞こえてくるよなんていう腹話術がある。特に海外から生中継の放送では、伝送する距離が長いために電気のスピードでもってしてもその間にいろんな処理が発生するためにああなるわけだね。今ではリモート会議なんかが身近になっているから、多少の遅延にはもう慣れたかな。リアルタイムに近いけれどやっぱりネット越しで議論をしようとしても、話初めのタイミングと終わるタイミングがうまくあわなくて「あわわ」となって気まずくなることが多いね。マンツーマンで話す分には大きな問題にはならないけれど、沢山の人とのやり取りはまだまだ自然というわけにはいかないようだね。でもそもそもあなたの意識も先に脳が計算し始めたあとに認識するわけだから、いわばZOOM画面のようなものだね。すべてはほんの少し後のことしか見られない。今は永遠につかめないとも言える。だからこそ今を掴むためには脳がそうしているように、まだピッチャーの手のうちにあるボールに向かってバットを振り出さなければならないんだよ。先の先読みでようやくその手に今の感触が伝わるわけだよ。ま、それを感じたときはすでに終わっているんだけれどね。