眺め
そこにいるだけ
あなたはいつもそこから人生の移り変わりを眺めている。いいことがあったり悪いことがあったり、記憶にも話題にも上がらない日々がほとんどだったりするけれど、あなたはそこから映画を見るようにただその景色を眺めている。ずっと見てられるぐらい変化があるようで、代わり映えのしない繰り返しを眺めているね。チョコレート工場を見学したときのように、ずっと溶けたチョコレートを攪拌している棒にまとわりつくドロドロに溶けたチョコの動きを眺めるがごとくにね。その流体はまるで生き物のようにしなやかに動くことを発見して一人悦に浸っているようにね。そうやってあなたは一観客として眺めるしかない。ただ映画館にいろんなお客さんがいるように、主人公や好きな役者に肩入れしてしまって、まるで現実がごとく映画の世界にどっぷり巻き込まれてる人もたまにいる。あなたはそこで静かに見守っていれば物語は勝手に進んでいくようになっているのにも関わらず、気に入らないからといって一人騒ぎ立てて周りに迷惑をかける人になってないかな。まさかそんなことぐらいはちゃんとわきまえているよね。
人生劇場
その映画のタイトルは人生劇場というものらしいけれど、そういえば正確なタイトルはあんまり見なかった気がしている。明らかにそれはあなたの人生を描いているかの如くよく見知った人しか出てこないね。だからちょっとでも気を抜くとあなたの世界と映画の世界がごっちゃになってしまうから注意しないといけないね。特にいろんなシーンが美しく変わるんだけれど、それはそもそも何ら小細工しているわけでもなく、自然そのものの風景が朝日や夕日に染まる町並みや風景があり、海にいけば素敵な海岸線が見え、山に登れば向かいの山脈の稜線の際が光り輝いている。思わず息を呑むような美しいシーンにあなたは我を失って見入ってしまう。まぁそれは仕方がないことだね。それだけあなたの心を鷲掴みにする風景だからね。でも、あなたがそこで何かを変えてやろうとしたり、その風景を持って帰ろうとしても所詮それは無理な話だね。次のシーンでは大嵐になっているからね。
観客
スクリーンに映し出されているそれは、あなたの世界のように見える。だからといってあなたが思い通りに変えてやろうと必死に頑張ったところで、すでに映画は取り終えた後だね。あなたが監督になって再撮影したら変えられるかといえば、それも難しいのはそれが戻ったり進めたりする機能がついていないからだね。だからできれば楽しんで見られるといいね。そこでなんとかしたいと思わないことが一番楽しむコツだね。もちろんハラハラドキドキするのはいいんだけれど、そこちょっと一時停止してやり直したいとかあなたが勝手になんとかしようとジタバタしても所詮無理な話だね。大丈夫なのは、そのシーンで一時停止するわけではなくてずっと物語は流れていくことをあなたがしっかりと思い直すことだ。そうするとさっきのような壮大な美しいシーンがまた映し出されることは間違いないからね。まさか天気まであなたの力でなんとか変えてやろうとは思わないよね。というか、あなたができることは「ジタバタする」ぐらいしかできないのなら、最初から力を抜いてただ眺めていればそれだけでいいんだよ。