繰り返す奇跡
家路
いつものようにいつもの時間に駅に到着してテクテク歩いているとき、ふとここはどこだろうと思ったりする。いやいやいつものように通り慣れている帰り道じゃないと思うんだけれど、家は本当にまだあるのかとふと疑問がわいたりするね。もちろん今日もちゃんと家に着いたんだけれど、これは当たり前のようですごいことなんじゃないかと思えてならない。毎朝我が家を出発して学校なり会社なり友人宅なりに出かけるね。もしくは釣りとかキャンプとかゴルフ場というレジャーかもしれない。とにかく何が起こるかわからない外界へ行って無事我が家に辿り着くことをこれまでもかなり繰り返している。まさに毎日が冒険の書であり道中にいろんなモンスターという名の出来事をかわしつつ最後にはちゃんとマイホームに戻っているんだからね。
起床
もう少し繰り返しの枠を広げて、たいてい夜になれば眠くなって横たわるね。疲れているときはどちらかと言うと気持ちよく眠りにつくことができることが多い。考え事が多いときはなかなかまとまらずに眠れなくなったりもする。そうやって夜の時間を過ごしているうちに必ず夜が明ける。朝になってそれまでぐっすりと気持ちよく眠っていればすっと目覚める。もし目覚めなければ約束事に間に合わなかったりする不都合が起こるから、特に朝の1分1秒はとても早く過ぎるね。ちょっと眠いからもう少しだけと思ってちょっとうとうとしてハッと目が覚めると、大抵はびっくりするぐらい時間が進んでいる。時間がバグったんじゃないかと思うくらいにね。これも毎回目覚めるなんて奇跡に近いような気がする。そしてうっかり寝過ごして遅刻したりすることも時にはあっていいんじゃないかと思ったりもする。だいたいのことがつじつまがあっていればそれだけでも運がいいね。
人生
学生時代の友人に子どもが生まれたって。おめでとう、家族が一人増えたね、なんてLINEを送ったりする。その一方で有名俳優が亡くなったというニュースも同時に見る。ああ、もう86歳だったのか、と時間の経過に驚いたりする。あなたの目の前に広がる景色は、生まれて死んでいくさまが日常だね。それもどこかの誰かであなたではない。あなたはずっとそれを少し離れたところから見ているようだ。あなたもそうやって生まれてやがて死んでいくと思い込んでいるけれど、残念ながらそのどっちも体験することは出来ないみたいね。生まれてきたはずのあなたなんだけれど、どうにもこうにもどうだったかはさっぱり記憶にないからね。これはとっても不思議なことに思える。あなたは生まれたての赤ん坊をみて表情が緩むし、亡骸を見て涙する。あなたはずっとそれらを当たり前だと思っていた。まるで吸って吐いてを繰り返す呼吸のように意識しないと感じないね。はてさて一体あなたは本当はどこにいて何者なんだろうね。