幻影

日々

選択肢

人生にはいくつもの選択に迫られるときがある。最初に結論を言えばどちらを選んでも正解だね。でもそれだと身も蓋もないので少し補足すると、どちらも現れるべくして現れていて、それ以外にも無数の選択肢があるはずだね。ところがあなたに決断をせまるそれは、ちゃんと選べるぐらいまで選別されている。よく考えてみるととても不思議だとは思わないかな。もちろん迷いすぎてそれ以外の選択肢を求めることもあるだろう。そんなときにも求めればちゃんと次の選択肢も現れるわけだ。そうこうしてあなたはとても悩ましい選択肢を検討してその中から選んでいるつもりだろうけれど、実はすでにそれを選ぶ運命は決まっていたわけだ。もっというとそこで迷ったという体験をすることも予め用意されていたアトラクションだということだ。

今と過去

そうやって自らの意思でこれまでの人生を歩んできた自負みたいなものが歳を重ねるごとにできてくる。それがまた次の選択肢を自動的に選別する仕組みになっている。これまでの経験だと思っている過去そのものは存在しない。苦い思い出として感じているそれらは実在しない。ということは過去はあなたが今思うことでいつも生み出される残像みたいなものだね。学生時代の思い出なんてどんどん欠けていっているはずだ。生物学的にもあなたの脳細胞の数も構造も若いとされるときに比べると全く異なっていることがわかっている。つまり脳を演算・記憶装置だと現代医学的に捉えてみても刻々とその構造は変化しているわけだ。装置の構造が変化しているのにずっと前から同じ記憶、考えを維持しているのはどうしてだろう。それはまだ近代医学でも解明されていない謎の一つだね。たしかにあなたにはそのときに怪我をした後が残っていたとしても、その経緯やストーリーについては思い出すたびに生み出されている創作ということになる。

未来

過去が思い出すたびに作られているという話よりは納得できるのが、未来も同じく現時点で想像できるいくつかしか思い浮かべることができないね。思いもしない出来事が起こると思っているからだ。ところが、その思いもよらぬことは過去の記憶だと思っている。ということは過去を思い出すたびに生み出される寓話とすれば、そんな体験が本当にあったのかどうかも怪しくなるね。ところが未来に関してはほとんどの人が予測不可能であるからこそどちらかというと明るい楽しい物語をなんとなく信じている人が多い。過去は取り戻せないけれど未来は変えられると思う原因はそこにある。でも過去も実は怪しく未来もないとすればどうだろう。今この瞬間にあなたは生まれて、大急ぎであなたはどんな人かという過去の設定をして現れた存在であって、それらが終わるとたちまちリセットされるとすればあなたのずっとこれまでというあなたさえどこにも実在しないことになる。ずっと存在しないあなたに過去も未来も存在できない。だからこそ今を感じているのが一番シアワセなんだよ。