何もないがある
慣れる
さて、非日常を体験すべく旅にでたあなたは、2日目にしてすでにそういう暮らしが日常になっていく。確かに家にいるよりも不便だし勝手が違って全ていつものようにとはいかない。けれど工夫してみればなんとかなることに気づくね。ということはいつもの生活でも例え何かを失ってしまったとしても、あれこれ知恵を出して対応していけばなんとかなるということだね。何かを失うことをいつも恐れているだけのあなたは、逆にそうなってもそれなりに対応できるということ。いつもは得ることばかりしか考えていないけれど、持たないなら持たないなりの生活もそれなりに楽しい。そう思ったらすでにあなたの世界が変化しているということでもあるね。
風土
ヘルメットを被った子ども達が通学路を自転車で走っている。都会の子どもとはその姿や素朴さが全く違うね。山奥に突如現れた集落に押しボタン信号が現れ、スクールゾーンと書いた横断歩道が敷かれている。地方の子どもたちはそうやって交通ルールを学ぶ他ないことに気づく。田舎はのんびりとした時間が流れていていつもギスギスして時間で人生を切り売りしているあなたには心が洗われることもあるだろう。しかし、その一方で進学塾での合格実績が高々と掲示され、有名人の出身地であることをあちらこちらで主張している。道を行く途中でもううんざりするぐらいにね。それが唯一の誇りであり、故郷を錦で飾るとはこういうことなんだなとぼんやり考えたりするね。
都市
都会はとてつもなく便利になった。都会には意味不明なものはほとんどない。それは全てに意図された計画に基づいて作られているからだね。その一方で地方は一見して理解不能なものが多い。だいたいそれらの存在意義は昔からそうなっているというもので、その後のアップデートは誰もしていない。そのせいでやっぱり田舎は遅れていると感じるのはあなたが都会に慣れているからという理由しかないね。都市の常識が全てに当てはまるわけではないということも感じられる。グローバル化と呼ばれて久しいこの国でも、地方都市と都心では雲泥の差がまだある。だから地方は劣っているとか遅れているとかいうわけではなく、先に言った通りその必要がないということだね。時間を切り売りするようになって、失うことばかり考えているけれどなくてもたいして支障がないことの方が実は多いかもしれないよ。失うことを恐れないことの意味はそれで人はより強かになれるということだね。