思惑通り
瞬間
あなたは今全速力で走っているとする。どんどん目的地に近づいているから思っていたよりも早く到着するかもしれないと期待している。ところが次の瞬間、人が多くなってとてもじゃないけれどそれまでのスピードでは駆け抜けることができない。仕方がないのでちょっと速歩きぐらいにペースを落としてそれでもできるだけスピードを高めにしようと工夫してね。人が少なそうなところを縫うように進んでいく。そしてしばらくやり過ごすと人は少なくなってきた。ようやくこれであなたも本来の速さを取り戻すことができる。しかし今度は足の調子がよくないので、それまで走ってきた全速力までスピードを上げることができないことが発覚する。なんてこったいとあなたはため息一つついて、それでもできるだけスピードを上げて前に進んでいる。思ったより早く到着できると思っていたことなんて油断するからこんな目にあうんだと自責の念に囚われながらね。
途中経過
最初はとても調子がよく、ほぼ全力でいけたのに、まさか途中でいろんな障害があることですっかり思惑が変わってしまった。何もあなたのせいではないことばかりだと憤ってみてもこればかりは避けようがないし、すべてが思い通りに動くならそもそも急いで目的地に向けて出発することもない。自分のペースで進めばいいしその到着時刻もあなたが決める必要もないね。でもそれでは今あなたがどれだけのところにいるのかがよくわからないし、いつたどり着くかもよくわからない。だからあなたがそれを決めてあなたがそこに向けて進むゲームにして楽しんでいるわけだ。普段の生活では何時にどこそこで落ち合うとか決められているから、そこに向かうのにどれぐらいの時間がかかるかを逆算して出発しているね。今は便利でスマホで出発や到着の時刻を入れることですぐに経路が表示されるね。で、素直にそのとおりに行こうと思ったら途中で電車が遅延したりして焦ったりしている。
イベント
まさに思っていたとおりにならないことを体験するためにこの世に生まれたわけで、すべてがスマホの指示通りになったとしたらあなたはとてもつまらないどころか、あなたがそれを体験する必然すら怪しくなってしまうね。すべてが誰かの思惑通りであり、計算結果通りであり、予測可能な世界ということになってしまうからそもそもドキドキ・ワクワクするような冒険はこの世から消滅してしまう。それよりもあなたの計算なんて吹き飛ばすぐらいのイベントが発生するからこそ、あなたはそれに立ち向かう。何も起こらないRPGなんて電源をつけて起動させればあなたはの操作は何一つ必要ないのと同じだね。そうではなく敵キャラが出現してそれをどうするかと乗り越えることでレベルアップしていくわけだ。そう思うとあなたの邪魔をするイベントたちは実はあなたが一番望む形で現れていることになるよ。どんなに辛いことでさえもね。人生を思惑通り効率的で合理的に予測可能なものにすると、気がついたら生まれて気がついたら死んでいる、ただそれだけのイベントが起こるシナリオになっちゃうよ。