悪友
内なる友
何でも相談に乗ってくれて何でも答えてくれる人がいる。それはあなたの心だね。あなたの心はあなたが疑問に思うことや、怒りや悲しみや楽しみをぶつけると全部それを一つ残らず答えてくれる。無視とかスルーとか聞こえないふりが絶対にできない。自分自身を騙すといったってその演技に乗っかってくれているだけで裏側まですべてはお見通しだね。そりゃそうだろう、あなた自身なのだからとあなたは思うかもしれない。けれどあなたがそこで話しかける言葉が本当のあなたなんだよ。それを声に出して言えないならば、あなたは偽りの世界に生きていることになる。でもどうしてそれを口に出せないんだろうね。あなたはそれほどいい人でもないことがバレるとまずいことがあるからかな。それとも本音がバレると損したり足元見られたりするからかな。いずれにせよ自分を押し殺して、自分を騙して、自分をさらけ出せない世界は一体誰のための世界なんだろうね。
相談事
だから夜中一人であなたは内なるあなたに向かって愚痴をぶつける。いつも文句も言わず一言残らず受け入れてくれるね。安心して本音を打ち明けられる。そうすることで本当にこのまま有耶無耶にしていいのかどうかはっきりとわかる。わかるんだけれどそれを明日実行できるかと問われるとできないことも共感してくれる。すべてをさらけ出せる世界はその瞬間だけだね。その内なる世界と形而上の世界はそうやっていつも分断されたままになる。同じ世界としてつながって一つになることを求めているけれども、内なる友に相談事が増えるにつれてますますその軋轢が大きくなってもはや2つの世界を行き来しているね。そうやってあなたはあなたを使い分けることで、かろうじて他者との世界を渡り歩いている。それはまるで綱渡りのようで少しバランスを崩してしまうとすぐに谷底へ真っ逆さまに落ちてしまう。今日も何事もなく渡りきって内なる友との再会にほっとしている。
恐れの原因
そうやってかろうじてバランスを保っているスリリングな世界を渡り歩くのも悪くない。けれども本当にそうしないとこの世界は許されないのだろうか。いつからか社会は厳しく感じ、生きづらさを感じるようになったけれど、もともとはそのために生まれてきたわけではなかったね。毎日はキラキラ輝いていて、明日はどんな楽しいことがあるんだろうと胸を膨らませていた。ところがいつの日か損得を覚え、駆け引きを押し付けられ、ずるくならないと足元見られるという経験をした。そのおかげで今は誰も信じられない人生を生きている。少しの暇な時間があるとすぐに余計な悪い想像の世界へまっしぐらだね。友達に話しかけた返事が少し遅れただけであなたは生きた心地すらしない時間を過ごしている。冗談で投げかけた言葉でさえ、相手の顔色が良くないことを感じたら死にたくなるような世界だ。一瞬たりとも気が抜けないシビアな世界にあなたはいる。そこから抜け出したいと思っているなら話は簡単だね。あなたの傷つきたくないというそのちっぽけなプライドを手放すことだ。そしてそのプライドの根っこを探せばすぐわかるけれども、その正体がなんといつも本音を話しかけている内なる友が原因だったわけだね。一番本音をさらけ出しているあなたの心の友が、実は不幸の原因だったなんてね。