目覚め
イメージ
あなたはどんな感じの人だろう。立ち振舞とか口癖とか姿かたちとか色々と説明しようとするとき、まさか鏡を見ながらすることはほとんどないね。というのも、あなたはすでにセルフイメージとしてあなたを概念化している。だから多くの人が映る集合写真からあなたを見つけ出すことができるし、毎朝鏡に映るそれをみてあなただと認識することができている。そんなの当たり前だと思う話かもしれないけれども、本当にあなたはあなたをきちんと見ているのだろうか。例えば今は身近にスマホがあって動画なり写真なりが自撮りできるね。それでいつも自撮りしていい感じに映る角度なりフィルターなりを探っている。いわゆる「盛れた」映像にするということは、あなたのセルフイメージに近づけている作業とも言えるね。本当はここはもう少しこうなってて、鼻はこんな感じ、などと気に入らないところを潰していくわけだ。まるでお友達をコーディネートするようにね。
夢中
目を閉じても、もちろん夢の中でもあなたはそのあなたが出演しているね。あなたというイメージはぼんやりしているようでとてもはっきりしている。誰がどう見てもあなたの特徴がそこにありありと浮かんでいるからね。友達も身近な人もそこにいる。しかしその顔はおそらくは今朝見た顔とは大きくデフォルメされている。けれども、歩き方や話し方、口癖などからしていつもの友達であることを確信しているね。すべては夢の中の話だから、実際に目の前にいるように感じているだけで実は頭の中にしかいない。いわゆる概念の中でしかないわけだ。それでもありありとその姿があなたには確実に見えている。そして面白いことにその中にもうひとりのあなたもきちんといるね。その夢を見ているのはあなただというのに、さらにその夢の中にも主人公としてのあなたがいる。概念の中であなたはそこかしこに存在できることになる。
覚醒
今は起きている。そして身支度をして街に買い物に出ている。お目当てのものを買ったのでカフェで一息ついているところだね。となりの女性はリモートワーク中なのか、せわしなくノートパソコンのキーボードを叩いている。飲みかけのコーヒーが脇においてあるけれども殆ど減っていない。とても忙しそうに見える。その向こうで学生がおそらくテスト勉強をしている。参考書を眺めたり閉じたりひっきりなしに繰り返している。たぶん英語の単語を必死に覚えようとしているようだ。そういえばここにもBGMは流れていて、さっき聞き覚えのある曲が流れたので気がついた。あなたはそこでいつものアイスコーヒーを飲んでいる。木の机と硬いイスの感覚を感じながらこの後いつもの電車に乗って帰宅するまでの道すがらをぼんやりと思いつつね。いつもの味よりは少し氷が溶けたせいか薄い感じがするアイスコーヒーを飲もうとして、目が覚めた。ああ、ちょっとウトウトしていたようだね。さて、ユメがウツツかの境界線はどこにあるのかたまによくわからなくなるときがあるね。というのも、世界もあなたも友達もすべてが概念でしかないからだね。