誰かの話
社会問題
社会の問題はあなたとは違うどこかで起こっているように思っている。少なくとも地球規模での環境問題や先進国の少子高齢化なんて言われたところで、あなたがどうするべきかなんて言ったところで何も変わらないからね。ところがそのすべての問題は実はあなたが原因だと言われたらびっくりするだろうね。いやいや、私は少なくとも海外事情に詳しいわけでも影響力があるわけでもないし、ましてや英語すらよくわからないのにそんなこと言われてもと、そこだけは絶対的な自信を持って反論できるね。でも結局は社会現象をどう見るかにかかっている。そして社会には貧困や差別や紛争が未だになくならずに武力で押さえつけようとしているところもある。見て見ぬ振りしてこれまでどおりの生活を送ることができるのはあなた。目を背けるどころか、本当に何も知らないわけだから知らないことはあなたの世界ではなかったことにすることも簡単にできる。
旅行ツアー
そういう難しいことは誰か優秀な人に任せておいて、あなたは明日の旅行ツアーを楽しみにしている。でもまた例の流行病が蔓延してきたようで心配だね。そのツアーに行くことが環境問題と関連しているなんて微塵にも思っていない。単に少しずつ破壊しているとかという些細な問題ではなく、旅行ツアーが楽しみな暮らしを営むことが果たしていい暮らしなのかどうかだね。お友達と旅行してなんでもないことを話ながら、言ってみたかった場所に行き、楽しみにしていた名産品を食べ、見たかった景色を楽しむ。あなたがそれをして幸せを堪能する事自体誰も悪いことだなんて言えない。でも少しだけ気がついているかもしれないけれど、あなたはどうしてそれをやりたかったのだろう。もっと他にも好きなことがたくさんあるだろうけれども、どうしてその旅行ツアーを選んだんだろうね。
バスに揺られて
好きな食べ物をお腹いっぱい食べると幸せだね。ところが現代ではそのお腹いっぱいがあらゆる病のもとになるから注意するように医者に言われるね。大好きなものが食べられないなんて、何を楽しみに生きているんだと嘆くかもしれない。おしゃれなレストランで見たこともないような料理がメディアからひっきりなしに流れている。あなたはそれをぼんやり眺めながらいつもの夕食をとっている。ああ、今度ここに行ってみたいねという、何気ないいつもの会話がそこにある。それがずっと蓄積されて念願の旅行ツアーに来ている。庶民のささやかな夢みたいなものだね。そんなに高いツアーにはおいそれと参加できない中、毎月パートタイマーとして働いた時給のほんの一部を貯蓄して、ようやくここに来れた。幸い心配していた天気も悪くならずにすみそうだ。また次はいつ来られるかな、なんて思いながら車窓から流れる景色を眺めている。ところでそれは本当にあなたが決めたことなんだろうか。それとも、そうなるように決まっていたことなんだろうか。そんなことを思いつつウトウト眠りについてしまったね。