清濁併せ呑む

日々

僥倖

こうして今をなんとなく過ごしていることは当たり前のように思っているけれど、実はそうではないね。ところがなにか緊急なことや困難にぶち当たらないとそのことをすぐに忘れてしまう。忘れてしまうぐらい幸せな瞬間なんだけれど本人はどうにも気が付かない。だって何ら事件も起こらず平和な時間だからね。それを世間では平和ボケなんていうけれど、逆に50年に1度ぐらいは戦争の危機を身近に感じないと、こうして何もそのことについて考えずに暮らせる幸せを見失ってしまうみたい。だから生きていて辛いことや悲しいこと、どうしようもないことがたくさんあるけれども、実はそれもあってのほっとした一息を手に入れることができるわけだ。

こじつけ

そういったことにいろんな意味を見いだせるのがあなたの才能でもある。そういうことが創造力を生み現代の文明化した都市に暮らしている。例えば空から鷹のような猛禽類があなたを狙っていることなんて、生まれてこの方気にしたこともないだろう。ただそれとは別に目に見えない新型ウィルスや流行病には、過剰なぐらいの恐れを抱いてしまっている。現代は医療によって命が支えられすぎているので、一人でも亡くなったりするとそれだけを切り取って誇張して報道する。ところが、動物の死因なんてそれだけではなく、もっと他にもたくさんあることは事実だね。病気だけが原因ではなく、不慮の事故も悲しいことに自殺まであるね。とにかく全員が生まれた以上なぜか死ぬみたいだという認識はなんとなくある。でも生まれたことも覚えていないあなたは死ぬこともわからないままであることには間違いない。

光と闇

あなたの世界はそうやって認識される仕組みになっている。楽しいことを味わうには苦しいことがないと気が付かない。幸せを味わうためには不幸がないと見つけられない。生きる喜びを感じるには病に倒れて死にかけないとわからない。すべてがセットになっているからそれを感じることができる。どちらか一方だけでいいと思うかもしれないけれども、どうやってもそうはならない。あなたが生まれてからずっと願っていたことは、みんなが幸せに生きられる世界が叶うことだね。ところが現実はみんなが幸せになった途端、それがわからなくなってしまうから結局不幸を感じ始めてしまう。満足をいつも味わって生きていきたいのに、不足がないと満足もないからどうしようもない。となれば、幸福も不幸もセットで同じなんだからどちらもあることが結局は一番満たされている状態ということになる。逆に幸福も不幸もない世界は、おそらく生きる世界ではないだろうからね。