あなたは愛
エピローグ
いつの間にかそれは始まっていた。そう、いつからかははっきりとはわからない。けれど気がついたらそうなっていた。気がついたからこそ、それに対して真摯に取り組んできたね。そしてどうやらそれもそろそろ終わるらしい。そこで今まで色々なことを思い出しての、振り返りをしなければならないと言われる。そうか、と思ってずっと昔をさかのぼっては見るものの、どうしても思い出せないのはそれが始まった一番最初のエピソードだ。なんとなくおぼろげながらそれは見えるような気がする。でも気がするだけでなんにも思い出せないのは、やっぱり発端となる起点はなかったのかもしれない。
オワリはじまり
何かが終わるときには、何かが始まるとよく言われるね。だからおそらくは振り返りをしている今がその時で、それは終わる直前だと思いこんでいるけれども、実はまだ見ぬなにかの始まりでもある。ただ始まりと終わりがそんな様子だとすると、終わった印象が強すぎてまさかそれが始まりの起点だったとは思いにくいだろう。だから、終わったことばかりを抱え込むことになる。あれもだめだった、これもだめだった、それは続かなかった、というどちらかというとネガティブな感情を伴いながら、苦い思い出として振り返りがちだ。ところが、実はそれは今という礎になっているすべての始まりがそこにあるということであれば、とても前向きで肯定的な思い出だけがそこに生まれるね。
何もなかった
そして究極的には始まっただの終わっただの大騒ぎしているうちに、もとに戻る。静寂の中にね。もともとあなたはそこになかった。あなたに関わるいろんななにかもそこにはなかった。今はそれがどうのこうのと大騒ぎしてにぎやかだけれども、あなたがもとにもどればなにもなくなるね。だからといって投げやりになったり悲観することは馬鹿げている。そうなったら虚しいと思っているあなたもいなくなるから、すべてが元通りだ。静かな宇宙に帰する。だから今のあなたは永遠だとも言える。永遠がなければ大騒ぎも存在しない。ほら、いいことも悪いこともひっくるめて愛おしくなっただろう。それがあなたの正体だね。