高速道路の上で

バイク旅

見知らぬ土地

全国津々浦々あちこちを旅してきたとしても、この狭い日本でさえ立ち寄ったところは数えるほどしかない。もちろん通り過ぎた道は山程あるし、何度もそこを通って違う旅をしてきたことは事実だ。混雑する観光地なるものは個人的にはどうして立ち寄らない癖があるので、なかなか共有できる有名所にはいつまでも疎くなってしまう。だからいろんな機会を得て、どうしてもそこへ立ち寄る必要をわざと作っていたりもする。でも休日はやっぱりというか、案の定混んでいて、ああ、やっぱりそうだよね、と早々に立ち去ろうと思うけれどもそこはぐっと我慢して観光ぽいことをしてみたりもする。

納得

混雑にえいやっと紛れ込んでみるとなるほどだから人気のスポットなんだろうな、と思うこともあって、何事も食わず嫌いは良くないなと反省させられることもある。もちろん、心から楽しめるのは何でもない景色を眺めていることなんだけれども、それも一つの思い込みでしかないことも同時に気が付かされる。縁あってそこにたどり着いたならば、色眼鏡を捨てて人混みに紛れ込んでみるのも旅の一興ではある。そこでの何気ない人々の会話や楽しんでいる様子を感じることもたまにならば悪くない。有名所や混雑する観光スポットにはがっかりする場所も含まれているけれども、それなりに納得できる理由を発見できたりもするので、やっぱり何事も「やってみる」ことはとても大事だね。

夕焼け

高速道路のひどく渋滞する道の上で、トンビが空高く飛んでいた。彼らにはこの都会の渋滞とは無縁で自由を満喫しているように見える。日が徐々に暮れて夜の帳が下りるのに、まだ車の列がはるか先まで延々と続く高速道路で何を思うだろうか。早く家に帰りたいとイライラするよりも、赤いテールランプが数珠つなぎに連なる光景の中で、皆がどうしてそんなに急ぐのか、その理由を考えている。休日に家族と久しぶりに出かけてディナーは思い出のあの店でと思いを馳せているのだろうか。それとも久しぶりに会う友人との待ち合わせの予定があって一刻も早く逢いたいのかな。ふと前の車のモニターにはアニメが流れている。きっと、時間を弄ぶ子どもたちのためのものだろう。いずれにせよ、無事にいつもの暮らしに戻るために人はわざわざ旅に出ているんだと気づく。高速道路の上で夕日が世界を赤く染めていた。こんなひとときも悪くないね。