スポットライト

日々

晴れ舞台

スポットライトが当たっている。キラキラと綺麗に輝いて見える。憧れの場所だね。いつかあなたもそのステージに立って、スポットライトを浴びて注目の的になりたいと思っている。なぜなら、そうしないと誰の目にも止まらず世間の片隅で暮らしているだけの存在で終わってしまう。それがどうにもこうにも寂しく思ってしまうからだね。今あなたはここで生きているぞ、という証を残したくて、できればたくさんの人に愛されたくて必死だ。そんなふうに思っているからこそ、孤独や寂しさがたびたび急に襲ってくるね。誰にも愛されずにいずれ死んでこの世からいなくなってしまう恐怖に、なすすべもなくただただ震えるしかないわけだ。

視程

孤独が耐えられない恐れになるのは、あなたがこの世に真理に触れてしまったからに過ぎない。実はこの世にはあなただけしかいないのではないかとね。それが正解か不正解かを議論するのはナンセンスだ。なぜならそれらは誰にもわからないことだからだね。意識があるという自覚が自我となって、その意識についていくら自我が議論したころで、すべては意識がある前提でのお話になるというオチだ。ということは意識がなくなったときの話は全くもって未知であり、それでも必死にこれまでの知識をかき集めて想像してみることはある程度できるかもしれない。けれども、その範囲は狭くてあっという間に限界を迎えてしまう。だから、それ以上のスケールには踏み込みたくても、踏み込めない。そこまでがぶっちゃけあなたの能力の限界なわけだ。

縁の下

スポットライトが当たっているところだけが認識できる。スポットライトを消せば何も見えなくなる。転じて室内照明にかわった瞬間に、びっくりするぐらいそれまで見えなかったものがぼんやり見えたりする。照明を当てていた人や、舞台装置、そしてステージ上の傷や汚れなんかに気づくだろう。舞台袖にはそこかしこに多くの人がいるにもかかわらずあなたには全く見えなかったね。会場に目を移して来場しているお客さんの顔をまじまじとみるに、年齢層が想像していたよりも違ったりする。中には退屈で寝てしまっている人も見つかるだろう。あなたがいつも見ているそれは、華やかなスポットライトを浴びている驚くほど狭い範囲だけだった。まずはそれが消えてからでないとすべてが終わった後の劇場全体像を見ることはできない。目を開けていれば見えるんだから、見るなんて意識もせずできる能力だと思っているだろうけれども、あなたの目は光しか見られない構造になっているんだ。光が当たらないところを観るには、目ではない感覚器官とちょっとした特別な能力がないと難しいことだけは知っておこう。もしかしたらあなたは確かにこの世で一人ぼっちかもしれないけれど、あなたが見ていたその裏側にはいつもあなたには見えない多くの人に支えられているようだ。