メリー・クリスマス
日常
なんてこともない特別な夜を過ごしている。何を言っているのかわからないかもしれない。でも今夜はこれまでの夜とは少し違っているはずだ。少し前までは街がにぎやかになるこの瞬間が恨めしく思っていたかも知れない。期待した通りの日には程遠くて、絶望と嫉妬に打ちひしがれていただろう。でも、それすらも実は当たり前にいつもくるわけではなく、世界が有事で怯えてしまうとそんなことすら軽く吹っ飛んだ経験をした。そう、当たり前でつまらない日でさえも、実は毎年決まってくるわけではないね。ようやく今年は街にいつもの賑わいが戻って、おそらくは家族で安心して過ごせる夜になった人も多いことだろう。あるいは友人とささやかな食卓を囲んで、ようやく何かを取り戻した気分で一杯になっている人もいるだろう。ほら、また不平不満が言える幸せを改めて噛み締めているわけだよ。
ささやかな夜
それでも、何も劇的な出来事もないだろう。久々に家族と過ごすことを取り戻して、また親子喧嘩しているかもしれない。余計な言葉や干渉を受けてやっぱり最悪だと再確認しているかもしれない。でもね、それでいいんだよ。そうやってあーだこーだと言える事自体が奇跡だとちょっと気づいただろう。何気ないささやかな夜は、大きくは何も特別なことはないけれども実は特別であることは間違いない。一人街に出て虚しくなったり、期待していたプレゼントは違ったものだったり、会えるとワクワクしていた人は急遽会えなくなったり、それで良いしそれが良い。プレゼントを買いそびれたかもしれないし、買っても渡せなかったりもしたね。その全てがこの瞬間に全部あってそれだけでやっぱりスペシャルなんだ。
プレゼント
そう、いつも気がつかないだけで、あなたはあらゆる大きなプレゼントをもらっている。それは高価なものでもレアなものでも、さらにあなたが欲しいと思っているものとはかけ離れているかもしれない。けれども、それ以上に二度とそれはない大きなプレゼントであることは間違いないね。嬉しくなったり切なくなったりできる相手がいて、プレゼントが面倒だなと思う仲間がいて、思っていたのと違う何かをもらったりするのも、そのすべてが愛おしく思えるはずだ。なぜならそれらはすべてあなただけに向けられた出来事であるし、あなたのために全てが用意されている。なんてことのない夜が特別に見えるのはそういうことだね。そしていつものことだけれども、今夜をそうして迎えられたことが実は奇跡だということを改めて教えてくれる日でもある。あなたが言うように単なる商習慣でしかないかもしれないけれども、そんな世の中を生きていることに改めて乾杯しようよ。