不安を恐怖に変えるもの
記憶
不思議なことにあなたはとぎれとぎれの記憶しか持っていないはずなのに、ずっとそれが連続してこれまで一瞬の隙間もなく連綿と続いてきたと思い込んでいるね。それが証拠に、以前は思い出せていた記憶も今ではもうあやふやどころか、全く思い出せないでいる。どんどん上書きされて今覚えているそれもやがては消えていくことも知っている。それなのに、あなたはずっとあなたのままでいるなんてどうして思えるのだろう。強烈な記憶はときに何度もフラッシュバックして、あなたを悩ませているけれども、よくよくたどってみるとそれすらもかなり書き換えられていて、もはや真実は闇の中となっている。そのときに気がつくのは、真実がそれほど重要なものではなく、今記憶として生み出されているそれが一番のあなたの苦悩となっている。その当時はインパクトがあったとは言え、それほどには思っていなかったことばかりだったかもしれないというのにね。
思い出
いい思い出はどんどんあなたにとって良い思い出と改ざんされていく。そして悪い思い出はこれもまたどんどんあなたにとって悪いものへとブラッシュアップされてしまう。そして、いい思い出だけで過ごしたいと切に願っているのにも関わらず、それに勝るに劣らないほど悪い思い出もあなたの思いとは裏腹にどんどん大きくなってしまう。でも冷静になれば、それもすでに今ではなく過去であって、特段今恐怖として蘇らせたところで実際には何かを引き起こす力すらないね。ただあなたは未来がよくわからないという「不安」を「恐怖」に変えてしまっているだけだ。それはまだ起きてもないことだけれども、またあんなおぞましいことが起こる可能性があると信じたときに「不安」は「恐怖」に化ける。そしてそれを化けるようにエネルギーをわざわざ注いでいるのは他でもないあなたしかいないわけだ。
恐怖のしくみ
あなたは断片的に発生する意識を、勝手に連続しているように思ってわざわざそうしている。そしてあなたという設定に従って一貫性を担保しないといけないと思いこんでいるからそうなるわけだ。ところが実際に全部覚えているのかと問われると、とたんに怪しくなる。そして思い出せないことも、思い出したかのように演出して嘘をでっち上げている。さらにそれをへんにこねくり回して眠っているときにでも悪夢として再現したりする。そうして、得も知れない恐怖に変換していることになるね。それがわかればあなたなんてこの世にいなくて、恐怖なんて実際にはでっち上げだということがすぐに気づくだろうか。ホラー映画の作りを見ればその正体がわかりやすいかもしれないね。ありもしないことをでっち上げて、それが今すぐにでも起こるかのように仕立て上げるとそうなるよね。からくりがわかれば不安なんて嘘っぱちだと笑い飛ばせるようになるんじゃないかな。だから大丈夫だ。心配無用だね。