もとはバカ

日々

冒険

旅に出る意味なんて考えると旅ができなくなる。なぜならそれは行ってみたいという衝動でしかないからね。経済的な面でもかかる費用は計算してみたら少なくない。だからいわゆる思慮深い人ほどメリット・デメリットなんて比較してしまうから、ますます踏みとどまってしまうわけだ。旅を例に出しただけで、その他のことでも同じような結果になる。だから現状を変えることがほとんどできなくなっていくわけだね。まだ何も知らない無垢の頃は、損得勘定なんてまだまだ未発達だから、それがどんな利益があるかなんていう発想すらない。ないからこそ多少の無茶ができる。さらに条件なんてなにも揃ってもないのに、結果オーライでなんとかなったりもする。さて、人生の分別が求められるようになった今のあなたの冒険は、まだ続いているだろうか。

離脱

安定した日常は、つまらない日常だと勘違いするから、違うあなたを探し求めようと思い始める。ところが、若かりし頃のように体力も暇もないからいつでもすぐにでもというわけになかなかいかない。そこでなんとかリソースをひねり出そうと計画を始める。そこですぐに気がついてしまうね。わざわざ不便で費用もかかる割には大した変化がないなとね。わかったふうになって予測してしまう。そうすると、計画だけで終わってしまう。さらに賢いあなたは、非日常を体験するのにわざわざそんなことをしなくても、ちょっとした行動を変えるだけでもうすでにプチ冒険となることを見抜いてしまう。で、頭でそれがわかったところで、実はやってみると意外に難しかったり、思っていたのと違ったりする。その原因は、利益がどうだとかという損得勘定がすべてを台無しにしている。いつの間にかそれが一番だと思うようになったね。損したり失敗したりすることをそうやって遠ざる世界にあなたは一人生きるようになっている。

良し悪し

それは人生の根本を履き違えているかもしれない。良し悪しをいつも判定する人生は、損失や失敗を異様に嫌う価値観に支配されている証拠だ。思い出してほしいのは、あなたがまだ若かりし頃はそんな感情は全くなかったね。それはあなたの世界では「バカ」かもしれない。稚拙でまだ価値観が未成熟だったと振り返ることもあるだろう。でもそれが実は人生における本来の姿だったわけだよ。損得や成否なんていうのは、あなたがこの世で生きるためにやむを得ずあとから習得した処世術でしかない。そしてそのせいで、キラキラしていた毎日が灰色の苦悩に溢れた日々に変わってしまったわけだ。ということは、チャレンジや冒険心などというのは、生まれたてのあなたを取り戻すことと等しい。であるならば、ときには大いに「バカ」になればいい。元通りのあなたがそこにあるのは間違いないのだからね。あなたの今の不安や怖れなんて、もともとは無縁だったはずなんだからね。