最新型

日々

開かないチェスト

そのチェストには5つの引き出しがついているんだけれども、壊れて一段目と五段目が何か引っかかって開かなくなっている。なんとか開けようといつも頑張ってみるものの、どうにもこうにも開かない。それで仕方なくまだ使える引き出しだけでやりくりしているわけだ。そこで気がつくのは、最初はどうにも不便だと思っていたけれども、特に一番下の五段目は開かなくてもそれほど支障がないことだね。一番下の引き出しっていうのは開け閉めするにもかがまなくていけないし、ちょうどいい高さのところがきちんと開くならそれでいいか、なんて思っている。まぁ、いつか気合をいれて直そうとか思っているけれども日常の忙しさにかまけて、そのままになっている。そしていつの間にかそれに慣れてしまって、もともとこのチェストはそういうものだとも思えてくるから不思議なものだね。

聞けないラジオ

随分前の若かりし頃に、深夜ラジオを聞きながら勉強をしていたことがあって、その当時奮発して最新型の「ラジカセ」なるものを買って今も持っている。それも、まだ使えるのでそのままになっているけれども、ラジオのチューナーの調子が悪くて、ある特定の番組しか受信できない。今ではスマホでも聞くことができるのでとっても不便に感じることもなく、かと言って完全に壊れているわけでもないのでだましだましそのままになっている。そのラジオで聞く放送局のチャンネルはいつも同じで、下手に選曲してしまうと二度と聞けなくなるかもしれないのでそのまま同じ局でずっと聞いている。今ではAMラジオといえどもかなり音質がよく聞こえるらしいけれども、そんな技術の進化とは全く関係なく、あなたはその固定されたチャンネルでなんの不自由もなく暮らしている。

進化と発展

それでもあなたは最新型を見かけるたびに、なんとなく欲しくなる。壊れたモノで十分な暮らしであるにも関わらず、やっぱり心のどこかでフルに機能するモノがあれば便利になると信じているからね。でも、一方でそれほど不便を感じていないので、毎年の最新機種を眺めながら見送っている。世間ではどうしても前と同じでは停滞ではなく、むしろ退化だと大騒ぎになるから無理やりでも機能や性能を少しずつアップデートしている。5つも引き出しは不要で、3つで十分事足りているし、ラジオもお気に入りが聞こえるならそれでいいのにも関わらずだ。でも気をつけなければならないのは、そんな時代を生きる多くの人の潮流に完全に歩幅はずれてしまっている。それが、社会の価値観とかで顕著に差異が明らかになると、ハラスメントや老害と呼ばれることになる。進化に無理についていかないとしても、特に生業にしている分野に関しては少しだけ敏感にならないといけないかもしれない。そこは最新型まではいかなくとも、それをきちんと知っていることぐらいは必要みたいね。となると、やっぱりそこは勉強していかないといけないということだ。また、ラジオでも聞きながらね。