人生全集のあとがき

日々

人生の書

ふと目についた本を手にしたとき、思っていたより長編でその分厚さにおののいている。手にとってその分厚さから、これを読み終わるにはどれくらいかかるだろうと未来を考えてしまうからだね。それと同時に、その本を手にとった瞬間にすべてを網羅して読むかどうかは別として、必要な部分をつまみ読みするとしても、必ずそれを読み終えることが確約されている。それをあなたの人生になぞらえてみるとどうだろう。分厚さが急に安心に変わったりもする。もしそれがあなたの人生の書として薄っぺらいものだったら、それを手にすることすら嫌な気になるだろう。コツコツと少しずつ読み解いていけば、いずれ残りのページが少なくなって読み終えることを冷静にもうひとりのあなたが見続けること。それがあなたがあなたを見つめているということになる。そして残りのページがあなたの残りの人生だと思ってしまうと、そりゃ気が気でなくなってしまい、その本を読みすすめるのに躊躇してしまうかもしれないね。

刹那

その本のページ数は最初から決まっていて、もちろん途中で増えたり減ったりしない。それに気がつけば丁寧に文脈を読み解いてページを進めようと思うだろう。ところが、つい読み飛ばしたり、ページを先送りしたりして頭に入らないときがある。もう読んでいるのかページを単にめくっているのかわからなくなるときもある。そうこうしているうちに気がついたらすでにめくったページはかなりの量となっていて、あれほど分厚くて読むのが大変だと思っていた本の残りも少なくなっている。そう、あなたがこれまで生きていた毎日の1ページのようにね。若い頃はこれはかなりの時間と手間がかかって大変だとうんざりしていたそれが、今となっては残りを気にしてちまちまと進めているんじゃないかな。そして、少し戻ったりしてすでに知っているとしても何度も繰り返しお気に入りの部分だけを読んでいたりする。

あとがき

いずれあなたはその分厚い本を読み終えるだろう。それはどんなに時間稼ぎをしようとしても確実にやってくる。思い起こしてみれば何気にふと気になった本を手にした瞬間からすでにそれが決まっていたわけだ。途中でかなり読み飛ばした部分ももちろんあるし、面倒で仕方がなかったこともあるし、どれほど丁寧に何度も読み返したところで腑に落ちないこともあった。でもそろそろ終盤になってそれらが何を意味していたのかという伏線を回収する段になってきただろう。ああ、なるほどあのときのあれはそういう意味だったのかと、終盤に近づいている。そうして読み進めてついにその本の最後にあとがきがある。さて、あなたの人生の書のその分厚い本を閉じる直前にあるあとがきにはどんなことが書かれているだろうか。それが今から楽しみでならないとすれば、それは間違いなく唯一無二のあなたにとってはとてもいい本だね。