ヴェールの中

日々

思い出

今感じていることはやがてすべて思い出と変わる。たしかにそれをはそうなんだけれども、それが昨日のことなのか、それとも数ヶ月前のことなのか、それとも数十年前のことなのか、いつの出来事なのかの区別はどんどん曖昧になっていく。旧友と再開して思い出話に花が咲く。その話している内容は考えてみれば随分も前で印象的な出来事の記憶は蘇ってくるけれども、それ以外は今か昔かなんてよくわからないね。外見を見るとお互い歳をとったと感じてはいるけれども、昔話をしている瞬間はタイムスリップしたかのように、あのときのままで何も変わっていない。そしてその昔の出来事は今もお互いの空間の中でぼんやりと浮かび上がっているね。懐かしいと感動するけれども、それ自体は全く同じ状況で再現しているわけではなく、ああ、そういえばそんなだったとアレンジされて今まさに生み出されたものであることは間違いない。

別離

そうやってする思い出話もいずれどちらかが目の前から消えていなくなると、おそらくはそんな一時もなくなってしまうだろう。そうやってどんどん手がかりが消えていく一方で、昔話の種は今も相変わらず蒔き続けている。もちろんそれが数年後にどのように語られるかはまだ誰も知らないわけだけれども、旧知の何かは泡沫のように次々に弾けて消えていく。だからこそ今を大切にすることがあなたがあなたであることを大切にするのと同義なんだね。あなたは焦ったり、苦しんだり、悲しんだりするけれども、それらもやがて別れがきて、おそらくは昔話にもできないようになる。そうやって消えていくからこそあなたはここにいることを確認しているわけだ。ならば別れを感じられること自体は奇跡であり、あなたが生きるこの世界には感謝しかなくなるだろう。

未来

それで今度は、そんな未来を考え始めたときにあなたはとても不安になる。過去もよくわからなくなるのと同じで、明日のことや、数年後のことなども同じようになると思い込んでいるからだね。いずれにせよよくわからないことを不安に思う癖があるわけだ。しかし全てが明確にわかったとしたらあなたの世界はどうなるだろう。ずっとそのままの感情を抱き続けなければならなくなる。もちろんそれができないから、今なんとなくであっても普通にいられる。けれども、何もかもが見えた瞬間あなたは絶望しか残らないね。よくわからないから希望が生まれるわけだし、何もわからないからどうにでもできると確信できる。だから全部無理せず曖昧なままでいいんだよ。それがあなたの世界だし、夢か現か幻かよくわからないところにいることであなたがぼんやりと浮かび上がっているわけだからね。