何者でもない
プライド
人間をそれなりに長くやっていると、それなりに経験したことを誇りに思っている。もちろん100点満点ではなく、もしかしたら自己採点ではかなり厳しい評価になるかもしれない。それでもあなたは今ここになんとか生きているわけだから、生き残りでもあるわけだ。生き証人としての誇りと自負は大きな声で言えるほどでもないけれども、かといって他人にバカにされるほど陳腐でもない。だから一家言あるはずだ。それ自体はそれで良い。けれどもそれによって窮屈な思いをするのであれば今すぐに書き換えればいいね。一度言ったからといってそれ以外を見なくするような縛り付けをしなくても、もっと柔軟に変化し続けるほうがよっぽどましだ。そうやって過去の栄光にしがみつけばつくほど、新たな未来の可能性を潰していくことは体験上知っているはずだ。
固執
あなたはあなたであるはずの特徴をそうやって抱え持っている。それがあなたが他と違う唯一の手かがりとなると思っているからね。でもそもそも他と違うということをそれほど大切にしなければならない理由はどこからくるのだろう。そんなことよりも、あなたの特徴をさらに磨いていくためには、いったんそれを捨てて新たな特徴を獲得することのほうが大切なことなのにね。だからあなたは一旦あなたをやめるフェーズが必要なわけだ。あなたをやめることがどうしてもできないというのは、あなたがそれを手放せないというジレンマに陥ってしまっている。それが長く続くと気がついたら古い地図を握りしめているようなもので、いずれそれはなんの役に立つわけでもなく、それどころか持っていることそのものが弊害に変わる。あれだけ美しかった花も時が経てば枯れ果ててしまうようにね。
手放す
だからあなたはあなたであるという罠から抜け出して、あなたは何者でもないあなたでいることが、逆説的に言えばあなたが確固たるあなたでいられる秘訣だ。いわば、あなたがあなただとはっきりと色を塗るたびに、あなたはどんどん薄汚れていくわけだね。もはやペンキまみれになっていうようなものだ。そうなればシャワーを浴びるように、一旦きれいに流したほうが結局あなたらしさを取り戻すことができる。もしあなたらしくやろうとして苦しくなってきたり、なんとなくうまくいかなくなったときはとにかくすべてを洗い流すようにするといい。その方法は何者でもないあなたに戻ればいいので、外側の塗りつけた色を落とし、握りしめている古い地図を手放すことだ。それでもいつの間にかあなたは色んな色に塗りたくられ、よくわからないものを握りしめているだろう。ときどきチェックするのがいいね。