気になるけど気にしない
気になってしょうがない
なんでもかんでも、いつも誰かに阿(おもね)っているのはとてもつまらない。本来、その生み出した何かに精緻さ、技巧さ、そんなものなくても素朴な、拙いものでも表現が楽しければそれでいい。それで全てなはず。とはいえ、わざとそうするのは違う。その時点で誰かの目を気にしているから。凝ったものであっても凝ってないものであっても、その時の精一杯で完結する。でも、何度もやり直しするのはどうしてかな。すぐにもっとすごいものができるはずと頭をよぎる。よぎるのは自分に対してか、それとも見てくれている誰かを思い浮かべてか。誰かが浮かんだ瞬間に傑作だったそれは消えてなくなっている。美しくあるべし。こうするべし。ああするべし。なんて、ノイズだと思って遮断しよう。あるがままでマスターピース。
迷いが生まれる
でもそれとは正反対な声が聞こえてくる。何がやりたいのかよくわからない。どういう意図なのか伝わってこない。どうしてそう思ったのか説明しなさい。叩き込まれるようにそう言われると途端に自信がなくなってしまう。えーと、ただなんとなくみんなもそれがいいかなーと思って、などと愛想笑いでごまかす。そんなにダメですかね。ダメなんですね。そうですか。わかりました。二度と同じ過ちはおかしませんから。こうあるべきものさしに飲み込まれてしまう。その時に一番怖いことは、与えられた美しさ、与えられた技巧さ、与えられた精緻さ、という少なくとも自分のものさしが他人のものさしに乗っ取られてしまうことだよ。
今度こそうまく
これはどうだ。会心作よ。これはどこにも文句は言われまい。そう思って自信満々。あれ?でも誰からも称賛されない。おかしいな。全部言われたところは直したはずなんだけどな。あの人にもその人にも気に入ってもらえれるはずなんだけど。そんなときがチャンスなんだよ。そう、誰かの目しか気にしていなかった乗っ取られた自分を取り戻すチャンスだよ。
ええい。もういいや。自分が好きだからそれでいい。それだけでいい。誰かのものさしに合わせるなんてやめよう。そう思ったら気が楽になった。
空を見上げれば大きな虹がかかっていた。すべてを歓迎してくれているような気がした。ほら今すぐできる自分のことだけをしていこう。誰かが作ったものさしは捨ててね。そうすると気になるあの人も憧れのその人もみんな消えていなくなる。もともと感じていた自分ができる大きな役割を果たすだけでいいんだよ。なんだ、ぐるっと一周して元通りじゃないの。