信念方程式
信念
社会はめくるめくスピードで変わっていく。でもあなたはどこかで得た信念というものを持ち続けている。だからあなたのそれは変わらない。でもどんどんスピードを上げてあなたから見えている外側の世界は変化し続けている。そろそろそれに追いつかないといけないのかなと思うこともあるけれども、やっぱりあなたの心にあるその信念を守り続けようとしている。そんなことだから時々あなたはどうしていいかわからなくなったりする。変わるべきか、変わらぬべきか、そんな心の中の小さな部分で大きな抵抗を試みる。そもそもあなたの世界はあなたの思い通りにはほとんどいかないことは知っている。でも、いつかはそうなることをずっと期待し続けている。それで身じろぎ一つできない閉塞感の真っ只中に立たされている。
展望
あなたの信念計算機は、僅かながらも勝算をはじき出している。そう、これでいいはずだといつも結果が同じになる。だから迷いながらもそれをもとにしてすべてを再計算し続けている。何度も何度も検証しても、大丈夫なはずだと答えが出るね。でも実際は計算通りどころか、ちょっとパラメータが違っていたのかと思うほどその予測とは異なる現実が目の前に広がっている。だからいつも不安になって、変数をその都度変えて計算し直している。いくらそうしたところで、毎回いい結果が出るわけでもないけれども、きっとそれでも勝算はあると決まりきった結果がはじき出される。ああ、やっぱりそうなのかとあなたは一瞬安堵する。けれども、また不測の事態に出くわしたとき、あなたの計算結果に基づく展望とはどんどんかけ離れていっているように感じる。だからその度に何度も何度も計算し直しているわけだね。
計算式
そうして、あなたは気づく。そもそもあなたが信じて疑わない計算式そのものがどうにも間違っているかもしれないとね。そう思った瞬間に大きな不安があなたを悩ませる。でも一方で今更それを変える勇気も持てない。また一から方程式を書き換えるとなると、今までのあなたがすべて間違っていたと感じてしまうからね。社会はどんどん変わっていくけれども、あなたはそこに原理を見つけて構築した唯一の拠り所でもあると思っている。でも、そこからはじき出される答えがどうにも最近は芳しくない。さて、それは計算間違いをしているのか、そもそもその式自体がまずいのか、とまた計算する羽目になる。気がついてみればずっと長い間そうやって計算し続けている。もしかしたら、計算そのものが不要なのかもしれないね。その計算をやめてみたらあなたは消えてなくなってしまうかもしれない。けれども、また新しいあなたに生まれ変わるかもしれない。