祝祭の日々
幻影
あなたは物心ついた頃からずっと夢の中で暮らしている。いやいや厳しい現実を毎日目の当たりにしてなんとかやり過ごしているはずだと反論するだろう。けれどもその厳しい現実はあなたが勝手に生み出した不幸や不満に満ちている。ああ、もうどうすればいいのだと頭を抱えたとき、あなたのその手の感触は覚えているかな。ふとそこにしっかりと咲いている路傍の一輪の花は見えているかな。実はあなたの言う厳しい現実というのはすべてあなたの空想の中にしか実存しない。その思い込みから脱することができたなら、春の陽気に様々な生命の息吹に包まれていることを感じられるはずだ。だって本当の現実はまさにそれだからね。でもあなたは心の目を閉じて、目の前の楽園をなかったことにしている。一体どういうことだろうね。
感触
悩みつついつもの道を歩いているとき、あなたの足からは大地の硬さを感じ取ることができる。あなたを包む空間の心地よさや、少し夕暮れになると肌寒くなる変化もあなたの感覚器官は鋭く捉えている。それをいつもキャンセルしてあなたは明日の仕事のことばかり考え続けているわけだ。まだ見ぬ明日のことばかりで不安になり、何もまだ起こってもいないことを起こったらどうするかというシミュレーションばかりを繰り返すことで、心地よい春の陽気すら恨めしく感じている。その心地よさはまさに今この瞬間にしか感じられない貴重な瞬間だというのにね。まるで映画のクライマックスを見逃しているかのような毎日を過ごしてしまっているわけだ。あなたが妄想の世界に耽るのは、あなたというぼんやりとした何かを守ろうとしているからなんだけれども、ではあなたは一体何者かと問われると答えに窮するようなものを必死で抱えている。
出番
過ぎ去ってみればすべて杞憂だったことばかりだ。すでにあなたは十分にそれらを体験しているはずだ。しかしながらその教訓はすぐに忘れ去られて、過去の苦しみばかり引っ張り出している。それが一番の不幸の原因だと知りながらね。花は咲き誇り、季節は移り変わっている。あなたの肉体はそれを体験しているのに、あなたはそれを見逃すようにあれこれと視点をずらしている。それでも毎年何があろうとも花は必ず咲き誇り、それを喜ぶように蝶は舞う。何がどうあっても必ずそうなる大自然の偉大さの中に包まれている。それを感じずにあなたは幻のあなたの影をずっと追いかけている。だからあなたがほんとうの意味で目覚めることが必要だ。あなたの肉体はそれを感じているし、大自然も目覚めよとあなたを祝福している。もう役者は常に揃っているわけだ。だから、あとはあなたの出番をみんな待ちわびている。